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金剛院の流儀
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金剛院の流儀
2024-09-19 00:00:00
ProfiteroleMix
ProfiteroleMix
対象年齢：全年齢
デイリー入賞： 132 位
参加お題：おいしい
ある資産家の男性がホテルで開催するパーティに、カメラマンとして呼ばれました。さすがに名の売れた大物揃いのパーティでしたが、その中で桜一文字さんを従えた晶さんを見かけた時は、逆にほっとしたものです。いや、金剛院家が庶民的という訳ではなく、むしろ金剛院は主催者に並ぶレベルの財力を持つ超大物ゲストのはずなのですが。
「あれ、早渚さんじゃないですか～。お仕事ですかぁ？」
晶さんが他のゲストと話し込んでいる最中に、桜一文字さんが私に気付いて話しかけてきましたので、応対することにしました。
「はい。桜一文字さんは晶さんのお付きですね？」
「ええ。まあ、私これでも金剛院メイド部隊の最上位クラスの一人なので」
確かに、桜一文字さんは多才な才覚をお持ちの方です。料理を始めとした家事全般に加えて、イラスト、歌唱にダンス。何が苦手なのか聞きたいくらいです。
「今回の主催者って、金剛院とどういった関係なんですか？」
「主催者のご子息がお嬢様に婚約を申し入れていたんですよ～。まあ、お嬢様も旦那様もNG出したんで、お断りの返事をさせていただいたんですがね～」
婚約を断ってきた相手をパーティに呼びつけるとはなかなか図太い主催者のようですね。
「ところで、今日は晶さん白いドレスなんですね。珍しい」
「あ、それはドレスコードですねぇ。ゲストの御歴々、皆白いドレスかスーツでしょう。主催者が白色好きみたいで」
成程、言われてみればホールスタッフやお付きの執事・秘書などを除けば、皆一様に白いフォーマルスタイルです。これはゲストを分かりやすくする意図もあるのかも知れません。そうして周りを見回していると、晶さんが戻ってきました。
「あら、早渚さん。ごきげんよう。このような場でお会いできるとは、嬉しい巡り合わせですわね」
「いつもお世話になっております、晶さん。鮮烈な赤だけでなく光り輝く白も晶さんをよく引き立てていますね」
「すご～い、早渚さんよくそんなすぐぺらぺらお世辞出ますね～？」
「桜一文字、賛辞の間違いではなくて？」
いや多分、桜一文字さんわざとお世辞って言ったな。どこでもマイペースだなこの人。
パーティも進み、場所をホテル自慢のレストランに移して食事を楽しむフェーズに入りました。しかし、晶さんの前に提供された料理は、明らかに他の人たちと異なります。端的に言うと、ソースたっぷりのナポリタンなのです。常識を疑います。周りの他のゲストたちも、小さなどよめきと共に視線を向けてきていました。
「すみません、何かの間違いではないでしょうか？」
桜一文字さんが流石に眉をひそめてウェイターに問いますが、ウェイターは首を横に振ります。
「金剛院晶様には、よく『赤』がお似合いになるという事でしたので、こちらを提供するようにと主催者直々の指示でございます」
なるほど、これは晶さんへの嫌がらせだ。婚約を断られた腹いせに、白いドレスをナポリタンのソースで汚してやろうという子供じみた行為。腸が煮えくり返りそうです。桜一文字さんも気付いたらしく、珍しく額に青筋立てているのが分かります。しかし、当の晶さんは気にしたそぶりもありませんでした。
「ふふ、よろしくてよ。確かにわたくしと言えば『赤』というイメージは広く知られるところですもの。お気遣い感謝いたしますわ」
なんて大人な対応でしょう、怒りを全く感じさせないなんて。普段は桜一文字さんのイタズラに怒って怒鳴り声をあげている晶さんからは信じられません。
「礼を尽くされたならば情をもって応えるのが金剛院の流儀ですわ。お食事、頂戴いたします」
晶さんはフォークを手に取り、麺の山の下の方からするりと美しく一口分を巻き取り、完璧な所作で口に運びました。ただの一滴たりとも、ソースが跳ねることがありません。小さなどよめきの種類が、動揺から感嘆に変わったのを感じました。
「ざま～みろバカ息子。うちのお嬢様ナメんなよ～」
桜一文字さんが本当に小さく呟きました。多分私以外には聞き取れてないでしょう。晶さんはそのまま大盛りのナポリタンを食べ進め、完璧なマナーと純白のドレスを守ったまま完食してしまいました。
「桜一文字、帰ったらすぐにお父様に報告ですわ。あの一族には思い知らせて差し上げませんと」
「ラジャっす、お嬢様」
帰りの車に晶さんが乗せてくれるというので、一緒に乗ったのですが、早速物騒な会話が始まりました。
「やっぱり晶さん怒ってたんですか。礼には情をもって応えるとか言っていたのに」
私がそう言うと、晶さんは悪い笑顔を浮かべました。
「あら、非礼も『礼』ですわ。ならばこちらも非『情』で応えて差し上げる。それだけのお話ですのよ？」
金剛院の『非情』とか考えたくないですね。終わったな、主催者。
「周りの目もあった事ですから、何かあってもあっちの味方するお偉いさんはいないんじゃないですかね～」
「ふふ、お料理もビジネスも『おいしい』のが一番ですわ」
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(masterpiece, best quality:1.3), illustration, (extream detailed), one girl, angel Descending
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ナポリタンでべちょべちょのぼく「おいしい！！」
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それマッマにしこたま叱られるやつ。
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