静寂の一服、油断の一瞬
2025-04-16 02:34:57
DALL-E3
DALL-E3
対象年齢：全年齢
デイリー入賞： 7 位
ウィークリー入賞： 32 位
マンスリー入賞： 145 位
参加お題：ティーパーティ
「では少尉、お点前を……」
静寂を割らぬ穏やかな声音で富士見軍曹はそう告げた。
茶釜から昇る湯気がふわりと空気を揺らし、茶室に柔らかな緊張感が漂う。
富士見軍曹の所作は優雅そのもの。
茶筅が描くリズムに、まるで時間さえ緩やかに流れていくようだった。
（今だ、今じゃない、でも次は今だ。いやまだか？）
ブロント少尉は正座のまま、明らかに挙動不審な視線で軍曹の手元を凝視していた。
そして、足はプルプルと震え始めている。限界は近い。
（くっ、なぜ和の作法にはこんなに脚への耐久を求めるのだ……。だがこれも試練！ 敵を知るためには己の限界を超えねばなるまい！）
一方、富士見軍曹は穏やかな微笑みを浮かべながらも、内心では深く息を吐いていた。
（……殺気が駄々洩れですよ。野生動物ですかあなたは）
それでも、表面には一切出さないのが富士見流。
表情ひとつ変えず、静かに点前を続けていた。
（和の心を知りたいのならば、せめて茶室の中だけでも殺気を抑えなさい）
そして——その瞬間は訪れた。
「どうぞ」
優雅に茶碗を差し出す富士見軍曹。
その瞬間。
「ぬわぁぁぁっ！！」
ブロント少尉、飛び出した。
だが——
「脚が……ッ！！」
感覚のなくなった脚がもつれて、そのまま前のめりに。
ズザァンッ！
派手な音を立てて、ブロント少尉は顔面から畳にダイブ。
うつ伏せに倒れ伏し、額と鼻先を畳に沈めたまま、全身硬直。
「ぐ、ぐふっ……し、失敗など……ない……これは、作戦の……うぅ……」
呻くブロント少尉を見下ろしながら、富士見軍曹は静かに立ち上がった。
一歩、また一歩と歩み寄り、茶碗を手にしゃがみこむ。
そして、
ぴたり。
ブロント少尉の沈んだ顔の目の前、畳の上に、抹茶の茶碗が静かに置かれた。
「少尉。どうぞ、お茶です。今なら動かなくても香りだけは楽しめますわ」
優しい声の裏に、微かな棘を感じるのは気のせいではない。
「……ぐ、ぐぅ……く、悔しくなど……いや、やっぱり悔しいです……」
抹茶の香りが、敗北の味とともに、少尉の鼻孔に深く染み込んでいった——。
うずくまったままのブロント少尉は、ただ抹茶の香りを鼻先で受け取りながら敗北を噛み締めていた。
「殺気は、茶室には似合いませんよ。次回までにお心を整えておいてくださいませ」
富士見軍曹の優しい声音が、ほんのりと刺さるように響いたのだった——。
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コメント
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少尉、足の親指と親指を重ねるのですわ！
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これは美味しゅうございますな(*´ﾉ旦`*)ｽﾞｽﾞｰ
和風のお茶会も良いなあ…！と思ったら最後(笑)
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Green tea でしょうか？ 私もこの座り方したことありますが、膝立ちと違って足痺れますね〜
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正座はキツイですよね…
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これが日本のわびさび（違う）
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外人さんには難易度高そうだな～
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