「AIピクターズ」AIイラスト・小説投稿サイト

リニューアル版の作品ページはこちら

ログインすると、いいねに応じたおすすめ表示や、画像生成機能が利用できます!

新規登録/ログイン

ブックマーク

紫陽花戦域のお弁当騒動 ――PH値異常と非公式少尉の動向についての記録――

2025-05-30 00:10:00

StableDiffusion

2025-05-30 00:10:00

StableDiffusion

53

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 7 位

ウィークリー入賞: 64 位

参加お題:紫陽花
紫陽花の色は、戦場の空気よりも先に異変を知らせる。 本来、青から紫、そして赤への色変化は土壌の酸性度による―― 帝国海軍陸戦隊、通称帝国海兵隊の面々が、色鮮やかな紫陽花の近くで座り込んでいる。 「伍長、この紫陽花、青と赤が混在してます。中間の紫じゃなく、まるで二系統」 「見てる。こっちは同じ株で花弁が縞模様になってる。PHが揺れてる。これは自然じゃない」 村上伍長(海兵曹長)は膝をつき、濡れた土をスプーン型の採取器で掬い取った。 部下の一人が地表温度と水分値を記録し、もう一人が土中ガス濃度を測定する。 「原因が外的なら、周囲から染み込んでる。内的なら……地雷系か。だが静かすぎる」 「異常値だけじゃなく、周期があります。明滅してるみたいに変動が――」 「……なにかが、ここで呼吸してるみたいだな」 村上班の兵士たちは、ひたすら真剣だった。 そこに、少し離れた場所で小さく座り込んでいる少女がいた。 ブロント少尉――この任務には非公式参加。 軍服を着ていないため、現場の誰からも「ただの民間人の子」としか扱われなかった。 「わたしは非番ですが、現地観察に基づく独自の戦地食育活動を展開する所存です……」 誰にともなく呟き、そっと弁当の包みを開く。 雨上がりの紫陽花の茂みの傍、石の上に腰かけて、静かに食べ始めた。 箸の動きは落ち着いているが、表情は微妙に不満気だった。 「……本来、こういう空間では『あ、それ美味しそうですね』という反応が発生するものと……」 そのときだった。濡れた石畳を踏みしめる、革靴の音。 咲き誇る紫陽花のあいだから、**ぬら……**という音がしそうなほどの静けさの中に、人影が現れた。 長身、制服のシルエット、しっとり濡れた黒髪、インナーカラーが虹のように光る八本の編みおさげ。 それ自身が意思を持つ、蛇のようなおさげが揺らす長身。 「八俣大尉?」 濃紺の制服に無言の威圧を乗せ、八俣 海凪 大尉が静かに現れた。 海兵隊員の声に反応したブロント少尉、弁当を頬張ったまま、立ち上がって叫んだ。 「ぬわっ!? 紫陽花の化け物!? 半魚人の頭目ヒュドラか!? 貴様、名乗れぇ!!」 「――非戦闘員がここにいるべきではない。移動を」 八俣大尉は、騒がしい少尉をスルーするように静かに言葉を履く。 訓練区域の状況確認に来たのだろう。 雨の匂いを吸った紫陽花の色と、大尉の目の色が重なるように見える。 「……非戦闘員、ではありません。私、少尉なのですが」 「服装と行動が一般市民に該当。現場安全規定により、戦闘指揮区域の立ち入りは制限される」 「いえ、その……わたし、軍籍あります。階級もあります。少尉です。ちゃんと登録も――」 「記録は確認済み。だが現場行動の権限は発生していない。現時点での振る舞いは、ほぼピクニックと同等と判断する」 「ぬわっ……!?」 ブロント少尉が声をあげる間もなく、八俣大尉は彼女の襟の後ろをひょいと掴んだ。 抗議も空しく、弁当ごと、ジープの荷台にそっと移動させられる。 「……移動完了。以後、車輌区域で静かに待機を」 「ぬぬぬ……わたし、軍人です……これは教育的活動です……ぐぬぬぬ……」 ジープの荷台でお弁当を抱え、もそもそと箸を進めるブロント少尉。 周囲の海兵隊員たちはその様子を気にするでもなく、真剣に土壌の分析を続けていた。 だが後に、村上伍長が弾薬箱を開けたとき―― 海兵隊員がダッシュボードを開けたとき―― 中から、完璧な配膳と保温処理が施された唐揚げ弁当(クマさん付き)が出てくる。 それは一切の痕跡もなく、黙って、ただそこにあった。 ――「お弁当騒動」は、誰にも知られず静かに進行していた。 八俣海凪大尉は、静かにその弁当箱を手に取った。 無言で箸を取り、一口、唐揚げを口に運ぶ。 八俣大尉の背中から伸びた、八本のおさげのうちの一本が―― まるで勝手に意志を持つかのように、ぴく、と揺れた。 それは風でも神経反応でもなく、まるで“感情の代弁者”のように、揺れ動く ……表情は変わらない。 しかし、そのおさげ一本の舞だけで十分だった。 誰も気づかないその沈黙の中で、八俣大尉は静かに箸を進める。 食後、彼女は弁当箱を無言で丁寧に拭き、そのまま元通りダッシュボードへと戻した。 まるで、最初から何もなかったかのように。 だが、彼女の背後の茂みに誰かの影があった。 白いワンピースの裾が揺れ、紫陽花の茂みにふわりと溶けていく。 八俣大尉は視線すら向けなかった。 ただ、もう一本のおさげが、ほんの一瞬、 八の字を描いて揺れた。

ログインするとプロンプトなどがチェックできます

※ 作品によっては掲載されていないことがあります

新規登録/ログイン
さかいきしお
一覧をダイアログでみる

コメント

投稿
クマ×娘 D.W

2025-06-04 17:17:36
返信
うろんうろん -uron uron-

キャラ弁かわいーニャ~♪

2025-05-31 03:03:17
返信
早渚 凪

2025-05-31 00:02:52
返信
五月雨

拙僧らもこちらの世界線に出てきてもよいのでわ?

2025-05-30 22:41:20
返信
九一

2025-05-30 22:37:25
返信
white-azalea

2025-05-30 19:59:01
返信
Kinnoya

美味しそう

2025-05-30 19:42:32
返信
へねっと

2025-05-30 12:18:55
返信
ガボドゲ

2025-05-30 10:41:36
返信
翡翠よろず

2025-05-30 08:23:15
返信
Ken@Novel_ai

2025-05-30 07:24:02
返信
白雀(White sparrow)

1枚目でちょっとしたホラーかと思ったチュン…

2025-05-30 07:12:38
返信
もみ

2025-05-30 06:47:48
返信
Anera

取らないので安心して食べなさいw

2025-05-30 05:55:06
返信
えどちん

2025-05-30 04:52:58
返信
謎ピカ

2025-05-30 04:43:41
返信
gepaltz13

2025-05-30 01:00:26
返信
成年自由党

2025-05-30 00:26:30
返信
なおたそ

2025-05-30 00:17:03
返信

1128投稿

-フォロワー

前後の作品

提携広告

シリーズ

おすすめタグ

    新着作品