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蓄音機とエルフ

2025-07-01 01:10:00

NovelAI

2025-07-01 01:10:00

NovelAI

10

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 200 位

参加お題:首を傾げる
 陽だまりの森のはずれ、人間の町とエルフの里の境界にその小さな屋敷はあった。主人を失ったエルフの女戦士、リュミエールは、今日も縁側で足をぶらぶらさせている。彼女の主人は数日前、不慮の事故でこの世を去ったばかり。しかし、リュミエール自身は「主人がいなくなったからって、朝ごはんが消えるわけじゃない」と、どこか他人事のように言ってのける。 「ねえ、アレク。ご飯まだ?」  不機嫌そうに声を上げるリュミエールに答えるのは、主人の弟であるアレクだ。兄の遺志を継ぎ、彼女を引き取ったものの、毎日が大騒ぎである。 「昨日も言ったけど、朝ごはんは自分で用意しような。エルフの戦士なんだろ?」 「エルフの戦士は料理しないんだよ。恋と一緒だな」  アレクはため息をつきながら、台所からパンとスープを運んでくる。「恋と一緒って、どこがだよ……」  そんな二人の奇妙な同居生活は、ある日突然変わる。アレクが屋根裏部屋から見つけてきた古い蓄音機、そして兄の声が録音されたレコードが、すべての始まりだった。 --- 「リュミエール、ちょっと来てみろよ」  アレクが蓄音機の前で手招きする。リュミエールは床に寝転がったまま、ぱたぱたと耳を揺らす。 「それ、何? 新しい武器?」 「いや、音を出す機械だよ。兄貴の声、録音されてるんだ」  アレクが針を落とすと、蓄音機から懐かしい主の声が部屋に流れる。 「リュミエール、ちゃんと野菜も食べるんだぞ」  その声を聞いた瞬間、リュミエールは首をかしげて、目を丸くした。 「え? 主人、天井に住んでるの? ちょっと呼んでくる!」 「いやいや、違う違う。録音だってば」 「録音は恋と一緒だな。触れないし、温かくもない」  アレクは頭を抱えてつぶやく。「冗談、顔だけにしろよ……」 ---  その日から、リュミエールは日に何度も蓄音機の前に陣取り、主の声に向かって質問を繰り返すようになった。 「主人、明日の天気は? あと、アレクが野菜を隠してるよ」  もちろん、蓄音機の主は「リュミエール、ちゃんと野菜も食べるんだぞ」としか答えない。 「ふむ、これは呪いかもしれない。恋と一緒だな」 「それ、何でも恋と一緒って言えば済むと思ってない?」 ---  ある日、庭でアレクが洗濯物を干していると、リュミエールが蓄音機を抱えて走ってきた。 「アレク! 主人の声が機嫌悪そうだよ! なんか、ゴリゴリいってる!」 「それ、針がずれてるだけだから!」  リュミエールはしばし考え込む。「じゃあ、恋も針がずれるとゴリゴリするのかな?」 「冗談、顔だけにしろよ……」 ---  夕方、リュミエールは縁側に座り、蓄音機を膝に抱えながらぽつりと言った。 「主人の声、消えないね。恋と一緒だな。消えないし、いつもちょっとずれてる」  アレクは、思わず苦笑いする。「それ、案外うまいこと言うな」 「でしょ? でもアレクの声も、録音してみる?」 「やめてくれ。俺のしょうもない叫びが何度も流れるのは、ごめんだ」 --- 「リュミエール、明日からは自分でご飯作れるか?」 「ううん、エルフの武器は包丁じゃないんだよ。恋と一緒だな」 「……冗談、顔だけにしろよ」 ---  夜空には月が静かに浮かび、星々がきらめきながら、遥かなる時の流れを語りかけております。蓄音機の中から流れる声は、まるで過ぎ去った日々の風が森を抜けていくかのように、縁側のリュミエールとアレクの耳元を優しく撫でていきます。木々はささやき、川は静かに歌い、記憶の波はやがて静寂の海へと溶けていきます。今宵もまた、二人の新しい物語が、夜の帳(とばり)の彼方にそっと紡がれていくのでございます。

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Epimētheus
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コメント

投稿
うろんうろん -uron uron-

2025-07-01 23:22:43
返信
五月雨

2025-07-01 22:50:22
返信
へねっと

2025-07-01 19:45:25
返信

1239投稿

-フォロワー

Thank you for your nice comment. I'm getting busy and cutting back on my activities. I'm sorry if I couldn't reply.

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