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盤上のエルフ、伝説のボードゲームを探して三千里

2025-08-28 01:11:00

NovelAI

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2025-08-28 01:11:00

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13

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 121 位

参加お題:ボードゲーム
乾いた風が埃っぽい酒場の扉を軋ませる。中に満ちるのは、安酒と燻製肉、そして男たちの汗が混じり合った、むせ返るような熱気だ。数多の冒険者が夢と野心を語らい、そして砕いてきた場所。その酒場の片隅で、一人の男が静かにグラスを傾けていた。彫りの深い顔、無精髭、達観したような瞳。その男の前に、音もなく一人のエルフが立った。 陽光を編んだかのような銀色の髪、森の湖面を思わせる翠の瞳。しかし、その美しい貌に浮かぶ表情は、獲物を見つけた狩人のそれだった。 「あんたが伝説のボードゲームチャンプ、スズキか?」 凛とした、しかし有無を言わせぬ声が店内に響く。ざわめきが一瞬にして静まり、全ての視線がエルフと男に注がれた。男はゆっくりと顔を上げ、つまらなそうにエルフを一瞥した。 「さあね」 短く、気だるげな返事。エルフ――ダイシアは、その答えを無視して腰の長剣に手をかけた。 「隠すな。その目、常人じゃない。幾多の盤面を支配してきた者の目だ。私と勝負しろ。ボードゲームで」 「断ると言ったら?」 「この店を更地にするまで剣を振るう」 あまりにも自分勝手な物言いに、酒場の客たちが息をのむ。しかし、ダイシアの瞳は本気だった。男はやれやれと肩をすくめ、テーブルの上の年季の入ったゲーム盤を指で示した。 「ルールは知っているのか?『キングス・フォリー』だ」 「見て覚えればいい。私が勝ったら、『伝説のボードゲーム』のありかを教えろ」 「良いだろう。負けた時のことは考えていない、か。そういう奴は嫌いじゃない」 男は駒を並べ始めた。ダイシアは彼の向かいにどっかりと腰を下ろし、興味深そうに木彫りの駒をつまみ上げた。 『キングス・フォリー』は、緻密な戦略と大胆な駆け引きが求められる、極めて奥深いゲームだ。定石、布陣、二手三手先を読む深い洞察力がなければ、熟練者には決して勝てない。 「まずは、セオリー通り、中央の支配からだな。『キングズ・ガード』の布陣だ」 男が堅実な一手で駒を進める。それに対し、ダイシアはというと。 「うーん…このグリフォンの駒、顔が可愛いから最前線!えいっ!」 ビシッ!と小気味よい音を立てて、普通なら後方に控えるべき強力な駒を、いきなり敵陣のど真ん中に単騎で突っ込ませた。 「なっ…!?」 男の眉がピクリと動く。酒場の客も「おいおい」「無茶苦茶だ」とざわめきだす。 「嬢ちゃん、それは悪手だ。次の俺のターンで、そのグリフォンは四方から囲まれて為す術もなくなるぞ」 「でも、一番乗りって気持ちいいじゃないか。一番風呂みたいなもんだろ」 「風呂と戦場は違う…!」 男の冷静なプレイスタイルは、ダイシアの奇想天外な手の前でことごとく掻き乱された。セオリーは通用しない。予測ができない。まるで泥酔した巨人が盤上でタップダンスを踊っているかのようだ。 「ふっ…面白い。この盤上はまるで宇宙。君の駒は予測不能な軌道を描く迷える小惑星のようだ。だが私の次の一手は、全てを飲み込むブラックホールとなるだろう!」 男がビシッと指先を天に突き付け、キザに決める。ダイシアは心底面倒くさそうな顔で、頬杖をついた。 「ごちゃごちゃ言ってないで早く指せよ」 その一言で、男の作り上げた荘厳な雰囲気は霧散した。周りで固唾をのんで見守っていた客たちが、どっと吹き出す。男は顔を真っ赤にして咳払いを一つすると、恨めしそうに駒を進めた。 戦いは熾烈を極めた。ダイシアの破天荒な攻撃を、男が卓越した技術で捌き、カウンターを狙う。一進一退の攻防が続き、盤上の駒は数を減らし、互いのキングは丸裸に近い状態になっていた。 ついに、男が会心の一手を放つ。 「チェックだ。これで詰みだ、エルフの嬢ちゃん。どう足掻いても、あと三手で君のキングは我が手に落ちる」 盤面は、誰が見てもダイシアの完全な敗北を示していた。逃げ道はなく、防御する駒も残っていない。ダイシアは「うーん…」と長い銀髪を指でいじりながら、盤面を睨みつけていた。誰もが男の勝利を確信した、その時だった。 「よし、決めた!」 ダイシアは自分のキングの駒をつまむと、ありえない場所に置いた。 「じゃあ、この王様、隣のマスに遊びに行かせる!」 「ま、待て!それはルール違反だ!?そんなルール、聞いたことがない…!」 「今作った。王の気まぐれ遠足だ。さあ、教えろ!『伝説のボードゲーム』のありかを!」 ダイシアがテーブルに乗り出して詰め寄ると、男は全ての気力を使い果たしたように、ぐったりと椅子にもたれかかった。 「小娘…お前が…これまで歩んできた、幾多の出会いと別れ、勝利と敗北に彩られた旅路…そのものが…」 「なに?」 「お前が通って来た道自体が、伝説のボードゲーム『ライフ・イズ・ジャーニー』なのさ…」 壮大な答えに、ダイシアは一瞬きょとんとし、やがて目を輝かせた。 「そうだったのか…!私の人生そのものが、伝説のボードゲームだったなんて…!」 彼女は深く頷き、納得したように呟いた。 「壮大なクエストのゴールが、実はスタート地点だったなんて。旅の終わりが始まりなんて、まるでメビウスの輪だよ。恋と一緒だな」 その言葉を聞いて、男は安堵したように微笑み、最後の力を振り絞った。 「…あと、俺はスズキじゃない。サトウだ」 ガクッ。 そう言い残すと、サトウは椅子から崩れ落ち、床に倒れてしまった。激闘の末、完全に力尽きたのだ。 「そうか…サトウ…」 ダイシアは特に感慨もない様子で呟くと、倒れたサトウを跨ぎ、彼が座っていたチャンピオンの席にどっかりと腰を下ろした。そして、唖然としている酒場の主人に向かって、高らかに言い放った。 「エール!一番大きいのを持ってこい!新しいチャンピオンの祝いだ!」 こうして、ダイシアの伝説のボードゲームを探す旅は終わりを告げ、彼女が新たな伝説となる日々が始まった。 ――数年後。 その酒場は「銀髪の魔女」と呼ばれる無敗のチャンピオンの噂で、以前にも増して賑わっていた。そこに、希望に満ちた目をした一人の若い剣士がやってきた。彼はまっすぐにカウンターの奥に座るダイシアを見据え、震える声で言った。 「あんたが伝説のボードゲームチャンプ、スズキか?」 ダイシアはゆっくりとエールのグラスを傾け、その琥珀色の液体越しに若者を見た。そして、かつて自分が打ち破った男と全く同じように、ニヤリと笑って答えた。 「さあね」 夜の静寂が、琥珀色のエールに溶けてゆく酒場の一隅。天井の煤けたランプだけが、使い古されたゲーム盤を静かに照らし出しております。銀色の髪を持つエルフは、まるで悠久の時を旅するかのように、木彫りの駒を静かに見つめているのでした。彼女が打ち破った男の名はサトウだったのか、それともスズキだったのか。もはや、それは些細なことでありましょう。今宵、窓の外では、天の川が壮麗な銀の橋を架け、無数の星々が瞬いています。彼女の指先が次に示す一手は、この銀河の煌めきさえも凌駕する、神々さえも知る由もない、新たな伝説の序章となるのでありましょう。

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Epimētheus
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コメント

投稿
へねっと

2025-08-28 21:07:41
返信
五月雨

2025-08-28 20:53:51
返信
Jutaro009

2025-08-28 20:11:40
返信
うろんうろん -uron uron-

2025-08-28 14:52:07
返信
もぐっちー(mogucii)

2025-08-28 07:56:48
返信
謎ピカ

2025-08-28 05:20:02
返信

1249投稿

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Thank you for your nice comment. I'm getting busy and cutting back on my activities. I'm sorry if I couldn't reply.

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