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エルフ流将棋は歩兵がエルフ

2025-09-02 01:11:00

NovelAI

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2025-09-02 01:11:00

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13

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 130 位

参加お題:将棋
「詰み、ですね」 秋葉原の片隅にあるボードゲームカフェ。その一角で、人間にしては小柄な青年――根倉(ねくら)マサトが、度の強い眼鏡の奥の目を細めた。 彼の指がパチリと小気味よい音を立てて盤上に置いたのは「金」。 その瞬間、私の王――エルフの森を統べる偉大なる女王(という設定)の駒は、前後左右、あらゆる逃げ道を塞がれていた。 「……つ、み?」 私、フューリアは信じられない思いで盤面を睨みつけた。銀色の長髪を揺らし、尖った耳をぴくりと震わせる。この私が、たかが人間の遊戯で負けるなど、あり得ないはずだった。 「はい、詰みです。フューリアさんの玉はもうどこにも動けません。僕の勝ちです」 「ま、待て! 今のはノーカンだ! 太陽の光が眩しくて、駒の動きがよく見えなかった!」 カフェの照明を指差す私に、マサトは「はあ、室内ですけど……」と困惑顔だ。 そもそも、私がこの「将棋」とかいう盤上の戦いに挑むことになったのは、ほんの些細なきっかけからだった。異世界からこの国に来て早三ヶ月。ある日、公園で老人が興じていたこのゲームを見て、戦士の血が騒いだのだ。 敵陣に切り込み、大将の首を取る。なんとシンプルで、私の勇武を示すのにふさわしい戦いだろうか。 そして、この界隈で最強の指し手だというマサトに、私は挑戦状を叩きつけたのだ。 「フューリアさん、序盤の戦術が少し大味すぎましたね。特に、この『歩兵』(ふひょう)を軽視しすぎです」 マサトは盤面を元に戻しながら、オタク特有の早口で解説を始めた。 「歩は将棋の魂ですよ? 一歩ずつ、しかし着実に前進し、時には自らを犠牲にして大駒の活路を開く。この歩の使い方が勝敗を分けるんです。あなたの戦い方は、いきなり飛車や角といったエリート部隊を突撃させて、それを支える歩兵をおざなりにしている。これでは戦に勝てませんよ。エルフの戦い方も、そんな感じなんですか?」 カチン、と来た。私の頭の奥で、何かがブチ切れる音がした。 歩兵だと? あの、一番弱くて、すぐに取られて、使い捨てにされる駒のことか? エルフの森を守る誇り高き我らが同胞を、あんな脆弱な駒と一緒にするな! 戦術を馬鹿にされるのは、戦士として最大の侮辱だ。 「……根倉マサト」 「は、はい?」 「貴様、今、我が同胞とエルフの戦術を侮辱したな」 「え、いや、そういうつもりじゃ……」 「いいだろう。ならば見せてやる。本当のエルフの戦いというものを。この『将棋』とやらを、エルフの流儀に則って改良する!」 私はバン!とテーブルを叩き、傲然と胸を張った。翠の瞳が、怒りと屈辱で燃えている。 「まず、この『歩兵』という駒が気に入らない。弱すぎる。私の軍の歩兵は、すべて精鋭たるエルフの戦士だ。よって、この駒の名前を『エルフ』とする!」 「はあ、『エルフ』ですか……」 「そうだ! そして、エルフの戦士は誇り高い! 人間の歩兵ごときに討ち取られるなど、エルフの歴史が始まって以来、一度たりともない!」 「え?」 「つまり、『エルフ』の駒は、お前の『歩兵』では取れない!」 「いやいやいや! それ、ルール崩壊してません!?」 マサトが素っ頓狂な声を上げるが、私の勢いは止まらない。 「うるさい! まだあるぞ! エルフの弓の腕を舐めるなよ! 一度狙いを定めれば、直線上の敵はすべて射抜くことができる! つまり、『エルフ』は前方、一直線上の敵駒を、距離に関係なくすべて取ることができる!」 「飛車じゃないですか! しかも貫通性能付きの! 歩兵の性能じゃないですよそれ!」 マサトは頭を抱えた。無理もない。彼の常識が、私の神聖なるエルフ理論によってガラガラと崩壊していくのだから。 「ふふん。驚くのはまだ早いぞ。戦いの中で試練を乗り越え、覚醒したエルフは『ハイエルフ』へと進化するのだ!」 「まさか……成るんですか!?」 「その通り! 敵陣に入った『エルフ』は『ハイエルフ』に成る! そして、ハイエルフがひとたび魔法を解き放てば、その力は広範囲に及ぶ。すなわち、『ハイエルフ』は、自身の左右斜め方向にある敵駒を、すべて一度に取ることができる!」 「角でもない! なんですかその殲滅兵器は!?」 マサトの顔が蒼白になっている。どうだ、思い知ったか。これがエルフの力だ。 「どうだ、マサト。この『エルフ流将棋』で、もう一度私と勝負しろ。もちろん、私の歩兵はすべて『エルフ』にさせてもらう」 私は勝ち誇った顔で彼を見下ろした。 しばらく沈黙が続いた。マサトはぶつぶつと何かを呟きながら、脳内で必死にシミュレーションしているようだった。やがて彼は、ゆっくりと顔を上げた。その顔は、恐怖でも困惑でもなく、未知のゲームを前にした子供のような、奇妙な好奇心に満ちていた。 「……フューリアさん」 「なんだ?」 「その無茶苦茶な設定、最高ですね。もはや将棋とは別の何かですが」 「当然だ。戦術の基本は一点突破だよ。恋と一緒だな」 「意味が分かりませんけど……冗談、顔だけにしろよ」 マサトは呆れたようにそう言うと、不気味に笑い始めた。 「ふひひ……ふひひひひ……! 面白い! 面白すぎますよ、そのルール! いいでしょう、受けます! ただし!」 彼はニヤリと口角を上げた。 「僕の『歩兵』は、あの頑固でしぶとい種族、『ドワーフ』ということにしませんか?」 「ドワーフだと!?」 忌まわしい名前を聞いて、私は思わず顔をしかめた。私の相棒(自称)の、あの石頭で酒臭いヒゲダルマ、ボルガの顔が脳裏に浮かぶ。あいつとは反りが合わないのだ。 「いいだろう! ドワーフごときに、我がエルフ軍が遅れを取るはずがない! 受けて立つ!」 「ふひひひ、ありがとうございます。では、ドワーフの性能ですが……」 こうして、私とマサトの、前代未聞の異種族将棋対決の火蓋が切って落とされた。盤上に並べられた駒は同じはずなのに、そこにはもはや「将棋」とは似て非なる、混沌と理不尽が渦巻く戦場が広がっていた。 マサトは駒を並べ終えると、心底楽しそうに笑った。 「ふひひひ、勘弁してください。こんなの、どうやって勝てっていうんですかねぇ……」 その目は、完全に獲物を見つけた狩人の目だった。私はまだ、この男の本当の恐ろしさを知らなかったのだ。 夜の帳が下りた大都会の片隅で、今、新たな神話が生まれようとしています。 広大な銀河を思わせる9×9のマス目、その一つ一つが星々のようにきらめく戦場で、二つの魂が火花を散らすのでございます。 一方は、悠久の森から舞い降りた、誇り高きエルフの戦士。彼女の瞳には、故郷の夜空に輝くプレアデスの星々が宿っております。 また一方は、無機質な数字と定跡の海を旅する、孤独な探求者。彼の脳内宇宙では、無数の星図が複雑な軌道を描き、勝利への唯一の航路を照らし出しているのでございましょう。 盤上を吹き抜ける風は、遥か古の戦場の記憶を運び、駒のぶつかる乾いた音は、遠い星が砕ける悲鳴にも似て、静寂のカフェに響き渡ります。 常識という重力から解き放たれたこのゲームの果てに、二人を待ち受けるのは、果たして栄光の夜明けか、それとも混沌の黄昏か。 今はまだ、誰にも知る由はございません。

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コメント

投稿
ガボドゲ

2025-09-03 19:33:48
返信
五月雨

2025-09-02 22:45:57
返信
Jutaro009

2025-09-02 20:40:43
返信
へねっと

2025-09-02 19:22:55
返信
もぐっちー(mogucii)

2025-09-02 07:14:50
返信
謎ピカ

2025-09-02 05:39:21
返信

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Thank you for your nice comment. I'm getting busy and cutting back on my activities. I'm sorry if I couldn't reply.

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