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伝説の赤い象と呪いのダンシング・ジョウロ

2025-10-29 12:12:00

NovelAI

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2025-10-29 12:12:00

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8

対象年齢:全年齢

「だから! なんで頭にジョウロがハマってるのよ、お兄ちゃん!」 エルフの里の静かな昼下がりを、サッシーの甲高い声が切り裂いた。彼女の目の前には、兄のラッキィが困り顔で立っている。その銀色の髪が美しい頭には、どういうわけか真っ赤な象の形をしたブリキのジョウロが、すっぽりとヘルメットのようにハマっていた。 「いやあ、それがさっぱり…。古代遺跡で『伝説の赤い象』の像を見つけて、ちょっとホコリを払ってやろうとジョウロを手に取ったら、足元のアリさんに気を取られて転んで、気づいたらこのザマさ」 「アリさんで転ぶエルフがどこにいるのよ!」 末の妹あやめが、おろおろしながらジョウロを引っ張るが、びくともしない。 「だ、大丈夫お兄ちゃん? 痛くない?」 「痛みはないんだが、妙に頭がスッキリして、体がウズウズするんだ」 ラッキィはそう言うと、突然ステップを踏み始めた。最初はぎこちなかった動きが、次第にキレを増していく。ターン、スピン、ムーンウォーク。それは、昨日まで棒立ちで踊っていた男とは思えない、情熱的でリズミカルなダンスだった。 「な、何これ!? お兄ちゃんのダンスが上手くなってる!」 あやめが驚きの声を上げる。 サッシーは腕を組み、真剣な顔で兄のダンスを観察していた。 「間違いないわ。これは古代遺跡にかけられた『赤い象の呪い』よ! ジョウロと引き換えに、ダンサーの魂を授ける恐ろしい呪い…!」 「そんな都合のいい呪いある!?」 ラッキィが華麗なターンを決めながらツッコむ。 「とにかく! 私が兄さんの呪いを解いてみせる!」 サッシーは腰に下げた剣の柄を握りしめ、高らかに宣言した。その瞳は冒険への期待にキラキラと輝いている。兄のため、というのは半分くらい本当で、残りの半分は退屈な日常から抜け出す口実ができたことへの喜びだった。 「え、私も行くの?」 「当たり前でしょ、あやめ! 兄さんの着替えとか色々あるんだから! さあ、旅支度よ! 目指すは『伝説の赤い象』がいるという『真実の泉』! 途中の街のアップルパイが美味しいらしいわよ!」 こうして、頭に赤い象のジョウロがハマったダンサーの兄と、やる気満々の女戦士の妹、そしてなし崩し的に巻き込まれた妹の、奇妙な冒険が始まった。 ◇ 旅は困難の連続…では全くなかった。 ラッキィの奇妙な姿と超絶技巧のダンスは、行く先々の村や町で大ウケだった。酒場では彼のダンスを見るために人が集まり、兄妹は旅の資金に困ることはなかった。 「お兄ちゃん、すごい! 今日の投げ銭、銀貨が5枚も入ってたよ!」 「フッ、このラッキィ様にかかればこんなものさ。このジョウロこそ、我がダンスの源泉! 名付けて『エレファント・ソウル・シャワー』!」 ラッキィが夕日に向かってビシッとポーズを決める。頭のジョウロがキラリと光った。 「冗談、顔だけにしろよ」 あやめが冷静にツッコミを入れる。 すっかり人気者になった兄を見て、サッシーは少しだけ不満そうに頬を膨らませていた。 「でも、やっぱりあのジョウロは変だよ。完璧なダンスなのに、頭だけ間抜けだもん」 あやめが言うと、サッシーはなぜか得意げに答えた。 「不完全なところに人は惹かれるものなのよ。完璧じゃないからこそ愛おしい。恋と一緒だな」 「…さっき変だって言ってたのに」 「うるさいわね! とにかく、こんなところで油を売ってる場合じゃないの! 早く『真実の泉』に行くわよ!」 本当は、自分が活躍する場面がなくてつまらないだけだったが、サッシーはそれを決して口にはしなかった。 長い旅の果て、三人がようやくたどり着いた『真実の泉』は、想像していた神秘的な場所とは程遠い、ただの小さな水たまりだった。そして、そのほとりに『伝説の赤い象』はいた。 それは、体長わずか15センチほどの、陶器でできた真っ赤な象の置物だった。 「……え?」 三人は固まった。置物の横には、古びた木の立て札が刺さっている。 『幸運を呼ぶ!? 伝説の赤い象! この象に水をかけると、良いことがある…かも? (当社比。効果には個人差があります。ジョークグッズです)』 「……」 「……」 「……えーっと、つまり」 あやめがおそるおそる口を開く。 「お兄ちゃんが呪いだと思ってたのは、ただ遺跡で転んで頭にジョウロがハマっただけで、ダンスが上手くなったのは、頭を打った衝撃か、あるいはこの旅で練習した成果…ってこと?」 ラッキィは自分の頭のジョウロにそっと触れた。サッシーは天を仰いだ。壮大な冒険の果てにたどり着いた真実は、あまりにもしまらないものだった。 ◇ 故郷の里に帰ると、ラッキィの頭のジョウロは、鍛冶屋のおじさんが金槌で数回叩いただけで、いとも簡単にごろりと外れた。あっけない幕切れだった。 だが、物語はそこでは終わらない。 「ダメだ! ジョウロがないとどうも調子が出ない!」 呪い(ではなかったが)が解けたラッキィは、なぜかスランプに陥ってしまった。それを見かねたあやめが、兄のためにデザインした特製の「ダンシング・ジョウロ・ヘッドギア」を開発。二人は兄妹ダンスユニット『エレファンツ』を結成し、瞬く間に大陸中の人気者になった。 そして、主人公のサッシーはというと。 「戦士はもう飽きたわ」 旅の途中で見たガラス細工の美しさに心を奪われた彼女は、あっさりと剣を置き、ガラス職人の道を歩み始めた。自分勝手でわがままな彼女の性格は、熱く溶けたガラスを自在に操る、繊細かつ大胆な作業に驚くほど向いていた。 誰もが、それぞれの道を見つけ、幸せに暮らした。 頭にジョウロがハマるという、ちょっとした不幸から始まった旅は、結果的に彼らにとって最高の宝物をもたらしたのだった。 夜の帳が地上に降り、満天の星々が瑠璃色のインクをこぼしたかのように瞬く頃。 人里離れた工房では、ひとりのエルフが灼熱の炎と向き合っております。 彼女の名は、サッシー。かつて剣を握ったその手は今、繊細なガラスを操り、星の光を閉じ込めたかのような輝きを生み出しているのでした。 遠い街の舞台で喝采を浴びる兄妹の華麗なステップと、ここで静かに燃え上がる炉の炎。 形は違えど、それは同じ情熱のきらめき。 伝説の赤い象がもたらした奇妙な冒険の旅は、彼らにとって、自分という名の星を見つけるための、長い滑走路だったのかもしれません。 窓の外では、風が森の木々を揺らし、まるで遠い日のダンスの喝采を運んでくるかのように、優しく工房を包み込んでおりました。

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Epimētheus
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コメント

投稿
ガボドゲ

2025-10-30 21:15:56
返信
へねっと

2025-10-29 20:39:05
返信
BBぼるてっくす

2025-10-29 14:15:01
返信

1215投稿

-フォロワー

Thank you for your nice comment. I'm getting busy and cutting back on my activities. I'm sorry if I couldn't reply.

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