藍引島・特別戦術訓練:甘き香りと森の賢者
2025-12-22 10:54:02
対象年齢:全年齢
参加お題:フレグランスミスト
「いいですか皆さん!今回の訓練は『実戦さながらの緊張感』がテーマです!」
夕闇が迫る藍引島の波止場。ブロント少尉は、自分の身長ほどもある巨大なバックパックを背負いながら、元気いっぱいに声を張り上げました。金髪のポニーテールが、彼女の動きに合わせてピョコピョコと楽しげに跳ねています。
「教官!そのミニスカートは、ジャングルでの匍匐前進に向かないと思われます!」 福井候補生が黒縁眼鏡を光らせて指摘すると、少尉は「えっへん」と胸を張りました。
「福井さん、甘いです!『心の余裕』……。たとえ密林であろうとも、乙女は常に可憐であるべきなのです!極限状態でも自分を保てる者は強い!!
ふふん、見ていてください。私はこれ見よがしに、優雅に皆様を翻弄してみせますわ!」
少尉はそう宣言すると、おもむろにポケットからピンク色のスプレー缶を取り出しました。 「シュッ、シュッ!」 ジャングルの生臭い風の中に、場違いなほど甘い桃の香りが広がります。
「あはは、いい香り!さあ、訓練開始です!白雀、いくよーっ!」
「ピーッ!」
真っ白な白雀を肩に乗せ、少尉は驚くべき軽快さでジャングルの闇へと消えていきました。
訓練開始から数時間。
追跡側の富士見軍曹は、泥の上に膝をつき、歯噛みしていました。
「……信じられない。足跡が、ここで完全に途切れている」
154センチの小柄な体に、自衛陸軍の迷彩服を完璧に着こなした彼女の追跡眼は確かです。
しかし、ブロント少尉の動きは、彼女の常識を遥かに超えていました。
少尉は、わざと目立つ足跡を残して進んだかと思えば、突然自分の足跡を正確に踏み戻る**「止め足」を使い、そこから横へ数メートルもの大ジャンプを敢行して追跡を断絶。
ある時は蜘蛛のように垂直な岩壁を登り、ある時は鹿のように倒木を跳ね、さらには熊*が獲物を欺くように、自分の匂いを風上に残して、自身は音もなく風下へ回り込む。
「少尉の残り香が……あっちにも、こっちにもしますぞ……!」
福井候補生が鼻をひくつかせ、困惑の極みに達したその時。
「待って。あそこ!」 若菜少尉が指差した先に、茂みを抜けた開けた場所がありました。
そこには、切り株の上に置かれたスプレー缶と、そのボタンを器用に片足で踏み抜く白雀の姿。
「シュッ……シュッ……」
定期的に噴射されるミストが、三人の鼻腔を甘くくすぐります。
「おとり……!? ということは、背後――」
富士見軍曹が振り向こうとした瞬間、冷たいモデルガンの銃口が彼女たちの背後に突きつけられました。
「――残念。皆様、ここで『戦死』ですわ」
そこには、巨大な荷物を背負いながらも、汗ひとつかいていない笑顔のブロント少尉が立っていました。
金髪のポニーテールが木漏れ日に輝き、彼女は最高に「キマった」表情で勝利を宣言します。
……しかし、その直後。
「――なーんて!あはは、皆さん、今の最高にカッコよくなかったですか!?」
少尉はモデルガンをホルスターに放り込むと、いつもの元気な天然娘に戻って駆け寄ってきました。
「はい!これにて訓練終了でーす!お疲れ様でしたーっ!富士見軍曹も若菜さんも、福井さんも、一生懸命追いかけてくれてありがとうございます!」
少尉はバックパックをどさりと下ろすと(地面が少し揺れました)、中から色とりどりの袋を取り出しました。
「さあさあ、反省会の時間ですよ!頑張った後の甘いものは格別ですからね。私が持ってきた特製スコーンとお茶で、パーティーしましょう!白雀ちゃんも頑張ったから、ひまわりの種をどうぞ!」
「……少尉。あの『熊』のような機動力の後に、そのお気楽さは反則です」
クールな富士見軍曹も、毒気を抜かれたように苦笑いするしかありません。
ジャングルの真ん中。甘い香りのミストと、焼き菓子の香ばしい匂いが混ざり合う中、ブロント少尉の明るい笑い声が響き渡るのでした。
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白雀ちゃん賢い!大活躍! ありがとうございます♪
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