春の残り香と、約束の赤 ―― 黄金色の草原に消える君へ
2026-05-04 20:00:46
対象年齢:全年齢
【1枚目】 春風の悪戯と、君の視線
春の陽光が優しく降り注ぐ、どこまでも続く草原。
足元には、真っ白なシロツメクサと淡い紫のレンゲが、まるでお互いを引き立て合うように咲き乱れている。
彩葉は、ふかふかの草の上に静かに腰を下ろすと、少し悪戯っぽく微笑んでこちらを見上げた。
「……ねえ、さっきからずっと見てるでしょ?」
風が吹き抜け、彼女の長い銀髪がさらりと踊る。
新しく入れた鮮やかな赤いメッシュが、春の光を反射して、まるで彼女の瞳の片隅に宿る熱を象徴しているかのように揺れた。
「そんなに珍しい? 髪、少しだけ変えてみたんだけど……」
彼女の右目は黄金色の陽光を、左目は燃えるようなレンゲの紅を宿している。
澄み切ったその瞳には、青空と、そして動揺を隠せない僕の姿がくっきりと映り込んでいた。
「ふふ、そんなに黙り込まなくてもいいのに。……でも、嬉しいな。君が一番に気づいてくれて」
彩葉は少しだけ頬を染めると、視線を落とし、手元のシロツメクサにそっと触れた。
遠くで霞む青空からは、春の訪れを祝うような鳥の声が聞こえてくる。
「……ここ、風が気持ちいいね。もう少しだけ、こうして二人でいよ?」
揺れる草原の真ん中で、彼女の凛とした、けれど柔らかな存在感だけが、僕の世界のすべてになった気がした。
【2枚目】 エンディング:春の残り香と、約束の赤
草原を吹き抜ける風が、少しずつ冷たさを帯び始める。
黄金色に染まったシロツメクサの海の中で、彩葉はゆっくりと立ち上がった。
「……もう、行かなくちゃ」
彼女が振り返ると、逆光に照らされた銀髪が、透き通るような白金に輝く。
その中に一筋だけ混ざった鮮やかな「赤」が、沈みゆく太陽の名残を惜しむように、ひときわ強く主張していた。
「ねえ、今日のことは忘れないよ。君が私の目を見て、この髪に気づいてくれたこと」
彩葉は少しだけ目を細め、オッドアイに寂しさと愛おしさを混ぜて微笑む。
アシンメトリーなスカートの裾が、風に煽られて不規則なリズムで揺れ、彼女が今にも光の中に溶けてしまいそうな錯覚を覚えた。
「春が終わっても……またここで、会えるよね?」
彼女が差し出した手の先で、一輪のレンゲが静かに揺れる。
答えを待たず、彩葉はいたずらっぽく、けれど少しだけ泣きそうな顔で笑い、黄金の草原の向こう側へと歩き出した。
残されたのは、春の草の匂いと、網膜に焼き付いた鮮烈な「赤」の記憶だけだった。
「草原編 おわり」
PS.みどりの日らしいので残りのすべて久々に使い切ったった
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