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結婚とはな――

2026-06-11 02:13:46

NovelAI

2026-06-11 02:13:46

NovelAI

43

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 16 位

参加お題:結婚
下町礼拝所の昼下がり。各宗派合同で運営されるこの礼拝所では、今日も炊き出しの準備が進められていた。 食堂では子供たちが走り回り、老人たちがお茶を飲み、神官たちが忙しく働いている。 その一角で、チェルキーは野菜を刻んでいた。緑髪のポニーテールを揺らしながら、慣れた手つきで玉ねぎを刻み、隣ではスープ用の野菜を仕分けている。 「チェルキー先生」 呼びかけられて顔を上げると、若い女性冒険者が二人立っていた。どちらも少し緊張した表情をしている。 「ん? どうしたの?」 「相談がありまして」 「うんうん」 怪我だろうか。薬草だろうか。進路相談かもしれない。そんなことを考えながら包丁を置く。 女性たちは顔を見合わせ、意を決したように言った。 「結婚について教えてください」 チェルキーの動きが止まった。 「えっ」 数秒の沈黙。 「えっ?」 「結婚についてです」 「私に?」 「はい」 「なんで!?」 女性たちは不思議そうな顔をした。 「先生ですよね?」 「先生だけど!」 「神官様ですよね?」 「神官だけど!」 「賢者ですよね?」 「賢者だけど!」 「お医者様ですよね?」 「だからお医者様じゃないって!」 「でも診察できますよね?」 「できるけど!」 「じゃあ詳しいですよね?」 「その理屈おかしいよ!?」 礼拝所のあちこちから笑い声が聞こえた。 チェルキーは頭を抱える。魔物の解体なら教えられる。野営も教えられる。薬草も保存食も分かる。だが結婚だけは専門外だった。 その時だった。 ふわりと香ばしい香りが漂う。焼き立てのパンのような、煮込み料理のような、どこか優しい匂い。 嫌な予感がした。 頭の中に神託が響く。 食と人 二つの道は共にあり みえざるみちを みきわめるべく 「神託だ!」 「さすがチェルキー先生!」 「違うよ!」 チェルキーは思わず叫んだ。 「神様まで興味本位じゃん!」 遠いどこかで、美食神デリシアが『なにそれ。私も気になる』と言った気がした。たぶん気のせいではない。 しばらく悩んだ末、チェルキーはぽんと手を打った。 「あ」 「?」 「もっと詳しい人いた」 女性たちの顔が輝く。 「本当ですか!?」 「うん」 チェルキーは振り返って大声で叫んだ。 「バルサムさーん!」 すると、すぐ横の給食室から返事が返ってきた。 「うむ」 女性たちが揃って振り向く。 「近っ!?」 ガチャリ、と扉が開いた。 向こうには巨大な厨房。大鍋が並び、焼きたてのパンが積まれ、若者たちが炊き出しの準備をしている。 その中央から現れたのは、巨大なアフロとサングラス、そして異様なまでの筋肉を備えた大地母神マーフィアの神官バルサムだった。 「呼んだか」 女性たちは固まった。 「えっ」 「えっ」 「えっ」 チェルキーだけが満面の笑みである。 「来た!」 「この方は……?」 「バルサムさん」 「それは見れば分かります」 「結婚してるよ?」 沈黙。 「……えっ?」 「子供もいるよ?」 さらに沈黙。 「……ええっ!?」 バルサムは静かに椅子へ腰掛けた。 「うむ」 自然と周囲も静かになる。 「結婚とはな――」 意外にも話は真っ当だった。 「相手を尊重することだ。互いに支え合うことだ。共に食卓を囲むことだ。完璧な者同士が結ばれるわけではない。足りない者同士が支え合うのだ」 女性たちは真剣に聞き入った。チェルキーも思わずうなずいている。 その時だった。 食堂の扉が開く。 「あなた」 穏やかな女性の声。 振り向くと、そこには弁当籠を持った黒人女性が立っていた。短い天然パーマの髪に健康的な笑顔。 農園主らしい実務的な服装をしている。その隣には五歳くらいの女の子がいた。 「お弁当持ってきたわよ」 バルサムの表情がふっと柔らかくなる。 「ああ」 女の子は父親を見つけるなり満面の笑みになった。 「パパー!」 一直線に駆け出す。 女性たちが思わず身構えるが、バルサムは片手で娘をひょいと抱き上げた。 「おお」 娘は嬉しそうに笑い、ナディアはそれを見て微笑む。 そして相談に来た女性たちは完全に固まった。 「……」 「……」 「……」 やがて一人が震える声で言う。 「結婚してたんですか!?」 「している」 「娘さんいたんですか!?」 「いる」 「奥さん実在したんですか!?」 「実在する」 チェルキーは苦笑した。 「だから言ったじゃん」 女性たちは顔を見合わせる。 正直、驚いた。 だが、当たり前のように弁当を届ける妻と、父親に飛びつく娘の姿を見ていると、さっきまでの結婚論よりも、その光景そのものが結婚とは何かを語っているように思えた。 娘を肩車したバルサムは、少しだけ誇らしそうに笑う。 「うむ。結婚とはな――」 今度は誰も茶化さなかった。

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さかいきしお
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コメント

投稿
ガボドゲ

2026-06-14 05:56:59
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さかいきしお

2026-06-14 22:10:00
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999fun

2026-06-14 01:32:54
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さかいきしお

2026-06-14 22:09:56
返信
gosakky

えっ…。 なんだってーーーーーー!?(笑) いやでもなんか納得も出来る(笑)

2026-06-12 03:23:47
返信
さかいきしお

む?大いなる母にとって家族を持つことは当然だぞ

2026-06-14 22:09:53
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よ~みん

2026-06-12 00:45:58
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:24
返信
T.J.

2026-06-11 22:55:20
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:21
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うろんうろん -uron uron-

2026-06-11 22:05:35
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:17
返信
サントリナ

2026-06-11 20:57:25
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:14
返信
白雀(White sparrow)

2026-06-11 12:51:32
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:09
返信
kacky333

2026-06-11 10:01:51
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:09:05
返信
翡翠よろず

2026-06-11 08:24:40
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さかいきしお

2026-06-14 22:09:00
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ippei

誰?!

2026-06-11 07:29:45
返信
さかいきしお

バルサムさんも、ナディアさんも有名人なんだけど、結婚してるって知らない人いるみたい

2026-06-14 22:08:54
返信
Ken@Novel_ai

2026-06-11 07:27:10
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:07:28
返信
もみ

2026-06-11 07:11:36
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:07:20
返信
ucchie2772

ええ話にゃー❤︎

2026-06-11 06:58:46
返信
さかいきしお

わたしもまだ修行がたりないな~

2026-06-14 22:07:14
返信
しるばん

2026-06-11 05:22:36
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:05:48
返信
みやび

2026-06-11 02:44:48
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:05:45
返信
tare_koala

2026-06-11 02:30:17
返信
さかいきしお

2026-06-14 22:05:40
返信

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