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シャーリー東部域遠征記 ―ライスワインを求めてですぞ―

2026-06-15 02:22:51

NovelAI

2026-06-15 02:22:51

NovelAI

45

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 22 位

参加お題:田舎の風景
藍引島西部域。 砂漠酒場兼食堂。 夕方前の仕込み時間だった。 店内には香辛料の香りと焼きたてのパンの匂いが漂っている。 チェルキーは大鍋をかき混ぜながら、棚を見上げた。 「……あれ?」 何かが足りない。 もう一度確認する。 やはり無い。 「ライスワイン切れたよ」 店の隅で地図を眺めていた長身の女性が顔を上げた。 黒髪。 学院制服。 赤マント。 そして胡散臭い笑み。 賢者の学院スカウト科助教。 シャーリー・クラウンである。 「ふひひ?」 「東部域のライスワイン」 チェルキーは棚を指差した。 「料理用も無くなった」 「なるほど」 シャーリーは腕を組む。 「仕入れですな」 「お願い」 「承知しましたぞ」 即答だった。 その横で、のんびり反芻していたホルスタインも顔を上げる。 「ブモ?」 「遠征ですぞ」 「ブモ~」 ◇ 翌朝。 藍引島東部域。 そこは西部域とはまるで違う世界だった。 見渡す限りの棚田。 水を湛えた田んぼ。 山裾に沿って続く水路。 木造の農家。 風に揺れる若い稲。 「おお……」 シャーリーは思わず感心した。 「見事な田園ですな」 牛も感心したらしい。 「ブモ~」 二人はしばらく景色を眺めていた。 その時だった。 近くの農家から困った声が聞こえてくる。 「まだ半分も終わっとらん」 「酒の仕込みもしなきゃならんのにのう」 「人手が足りん」 シャーリーの耳がぴくりと動いた。 「ライスワインですな?」 農家たちが振り返る。 「そうじゃが」 「ふひひ」 シャーリーは得意げに笑った。 「それならば手伝いますぞ」 農家たちは顔を見合わせる。 学院関係者らしい綺麗な娘。 どう見ても農作業向きには見えない。 だが。 数時間後。 「なんじゃこの嬢ちゃん!?」 「速いのう!」 「しかも綺麗じゃ!」 農家たちは驚いていた。 シャーリーは泥の中を軽快に進んでいる。 苗を取る。 植える。 歩く。 植える。 歩く。 無駄が無い。 動きが妙に洗練されている。 まるで訓練された斥候だった。 「ふひひ」 「苗は等間隔ですぞ」 農家たちが感心する。 「嬢ちゃん慣れとるねえ」 「スカウトですので」 全く説明になっていなかった。 その横では牛も働いていた。 苗束を運び。 荷物を運び。 時々撫でられる。 「賢い牛じゃのう」 「ブモ!」 少し誇らしげだった。 ◇ 夕方。 田植えは無事に終わった。 農家たちは満足そうに頷く。 「助かったよ」 「これ持っていきな」 差し出されたのはライスワインの瓶。 だがそれだけでは終わらなかった。 味噌。 漬物。 野菜。 米。 干物。 謎の包み。 どんどん増える。 シャーリーが固まった。 「増えておりますな」 「お礼じゃ」 「遠慮せんで持っていき」 「ふひひ……ありがとうございまする」 牛を見る。 荷物を見る。 牛を見る。 「ブモ?」 運搬担当は決定事項らしかった。 ◇ 帰路。 棚田の脇を流れる川。 シャーリーは足を止めた。 制服を見る。 泥だらけだった。 袖も。 スカートも。 靴も。 見事なまでに農作業仕様になっている。 「……」 牛を見る。 「ブモ?」 「このまま帰るとチェルキーに怒られますな」 真顔だった。 ◇ 数分後。 夕暮れの川辺。 風が吹く。 木の枝に掛けられた赤マント。 制服のジャケット。 助教用ブレザー。 プリーツスカート。 テンガロンハット。 洗ったばかりの衣服が風に揺れている。 その下。 川辺の石に腰掛けるシャーリー。 白い体操着。 紺色の昭和風ブルマ。 スカウト科の訓練着らしい。 本人の説明によれば。 長い脚を川へ浸しながら、満足そうに空を見上げていた。 棚田は黄金色。 山は茜色。 川は静かに流れている。 「うひひ」 冷たい水を掬う。 「働いた後の川は格別ですな~」 牛は浅瀬で水を飲んでいた。 「ブモ~」 しばらく平和な時間が流れる。 やがて牛が振り返った。 「ブモ?」 シャーリーを見る。 もう一度見る。 首を傾げる。 「ブモ?」 シャーリーも首を傾げた。 「何か問題がありますかな?」 牛は考える。 制服姿のシャーリー。 知っている。 テンガロンハット姿のシャーリー。 知っている。 泥だらけのシャーリー。 さっき見た。 だが。 今のシャーリー。 知らない。 牛はさらに首を傾げた。 「ブモ??」 シャーリーは満足そうに頷く。 「うひひ」 「野外活動には着替えが重要ですぞ」 牛。 「ブモ……」 納得はしていない顔だった。 夕陽は静かに棚田へ沈んでいく。 藍引島東部域。 その日最後まで状況を理解できなかったのは、 たぶん牛だった。

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さかいきしお
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コメント

投稿
クマ×娘 D.W

2026-06-20 20:13:19
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たぬ仮面

2026-06-16 23:35:49
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Ken@Novel_ai

2026-06-16 06:11:07
返信
guest

2026-06-15 23:22:17
返信
アーマーブレイクりょな伯爵

その日最後まで状況を理解できなかったのは、 たぶん

2026-06-15 23:13:08
返信
ガボドゲ

2026-06-15 22:13:55
返信
ucchie2772

2026-06-15 21:16:45
返信
yoppy

2026-06-15 21:00:10
返信
サントリナ

2026-06-15 18:41:13
返信
もぐっち

2026-06-15 12:21:43
返信
kacky333

2026-06-15 12:07:08
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tare_koala

2026-06-15 11:41:59
返信
翡翠よろず

2026-06-15 08:26:30
返信
もみ

2026-06-15 06:53:38
返信
しるばん

2026-06-15 05:43:27
返信
みやび

うまい酒はよい米とよい水からじゃな~

2026-06-15 02:30:15
返信

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