生命の祝詞
2026-07-13 11:19:10
対象年齢:全年齢
参加お題:生命
「チェルキー高司祭。本日は空兵団訓練基地へようこそ。」
出迎えたのは、シェパード獣人のアイリス・ヴァイス伍長。
白い儀礼用セーラー制服に身を包んだ若き伍長は、凛とした敬礼で小柄な高司祭を迎える。
「こちらへどうぞ。」
基地では、うさ耳とねずみ耳の候補生たちが慌ただしく準備を進めていた。
神殿間の協力として招かれた幸運神の神官ダキニラと、使い魔の黒猫ケットシー・ケティも、その輪に加わる。
やがて将兵たちが静かに会場へ集まり、厳かな空気が広がった。
祭壇には、黄金色の麦穂、清らかな水、季節の果実、そして花々。
チェルキーはデリシア神の聖印を胸に、静かに祈りを捧げる。
「遍く生命に。」
「今日を生きる全ての者に。」
「命を捧げし者たちへ、感謝と敬意を。」
アイリス伍長は胸に手を添える。
セラフィナは黒翼を静かに畳み、ダキニラは幸運神の正式な祈りを捧げる。
宗派は違う。
種族も違う。
それでも、この祈りに込められた願いは一つだった。
生命への感謝。
静寂の中、チェルキーはゆっくりと目を開く。
やわらかな笑みを浮かべ、小さく頷いた。
「……それでは皆さん。」
会場の扉が開く。
並ぶ長机。
立ちのぼる湯気。
焼きたてのパン。
色鮮やかなサラダ。
香ばしく焼かれた魚。
あたたかなスープ。
そこでようやく、皆はこの祈りの意味を知る。
デリシア神の祝詞とは、命を奪うための祈りではない。
命をいただき、生きる力へ変えることへの感謝。
アイリス伍長も、セラフィナも、ダキニラも、ケティも。
将兵も学生も、神官も幻獣も。
笑顔で声をそろえた。
「「「「いただきます。」」」」
その一言は、今日も誰かの命によって自分たちが生かされていることを忘れないための、デリシア神へ捧げる最も身近で、最も尊い祝詞だった。
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