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シャーリーのインチキ講座 ― 看板 ―

2026-07-27 13:41:47

NovelAI

2026-07-27 13:41:47

NovelAI

44

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 67 位

参加お題:看板
 賢者の学院、スカウト科演習棟。  迷宮や敵拠点への潜入を想定した石造りの訓練施設の入口には、一枚の巨大な木製看板が据えられていた。  もっとも、その正体は厚い黒布で覆われ、何が描かれているのかはまったく分からない。  学生たちがざわつく中、シャーリー助教はいつもの「ふひひ♪」という笑みを浮かべながら、その布の掛かった看板を軽く叩いた。 「ふひひ♪ ダンジョンや敵拠点では、このような『いかにも怪しいもの』に出くわすことがありますぞ。」  学生補助員のダキニラが口元を押さえ、小さく笑う。 「うぷぷ♪ いったい何なんだろうね~♪」  学生たちの視線が、一斉に看板へ集まる。  シャーリーは肩をすくめて笑った。 「罠かもしれませぬ。」 「重要な情報かもしれませぬ。」 「敵の陽動かもしれませぬ。」 「あるいは――何でもないものかもしれませぬ。」  意味深な沈黙。  一人の学生が思わず尋ねた。 「……中身を教えていただけるのでしょうか?」  シャーリーはにやりと笑い、布をもう一度ぽんぽんと叩く。 「内緒ですぞ♪」  ダキニラが吹き出す。 「うぷぷ♪」  学生たちは互いに顔を見合わせた。 (絶対に重要な訓練教材だ。) (きっと実例なんだ。) (あれを見抜けということか。)  そんな空気が自然に広がっていく。  シャーリーは、その様子を眺めながら静かに続けた。 「覚えておいてくだされ。」 「スカウトにとって、一番危険なのは『いかにも怪しいもの』だけではありませぬ。」  一拍置いて。 「『怪しすぎるもの』もまた、疑うべきですぞ。」  学生たちは真剣な表情でうなずく。  誰もが、その言葉を「罠を見抜け」という意味だと思った。  まさか、別の意味が込められているとは夢にも思わずに。  シャーリーは軽く手を振った。 「では、規定時間内に迷宮を突破してくださいですぞ。」 「――訓練開始!」  班ごとに時間をずらしながら、学生たちは迷宮へと消えていった。      ◇  薄暗い石造りの通路を慎重に進む学生たち。  足元を探り、壁を調べ、天井を見上げる。  やがて、一本道の中央にそれはあった。 「止まれ。」  先頭の学生が静かに拳を上げる。 「……看板だ。」  黒布で覆われた、大きな木製看板。  あまりにも露骨。  あまりにも怪しい。  しかも、訓練開始前に見たものとよく似ている。 「助教が言っていたやつだ……。」  床に罠はないか。  支柱に仕掛けはないか。  布の裏に魔法陣はないか。  頭上から何か落ちてこないか。  周囲の壁に隠し扉はないか。  探知魔法。  長棒による確認。  縄の一本一本まで入念に調べる。  五分。  十分。  十五分――。 「……よし。」  ようやく安全を確認した学生が、小さく息を吐く。 「布を外すぞ。」  全員が身構える。  ランタンを構え、武器を下げず、魔法の詠唱も維持したまま。  布が勢いよく引き剥がされた。  その瞬間。  カッ――!!  看板に仕込まれていた魔導灯が一斉に点灯し、暗い迷宮が昼間のように照らし出される。  学生たちは思わず目を細めた。  そして。  そこに描かれていたものを見て、全員の思考が止まる。  看板いっぱいに描かれていたのは、こちらを指差して「ふひひ♪」と笑うシャーリー助教と、口元を押さえて「うぷぷ♪」と笑うダキニラの、妙に完成度の高いデフォルメ肖像画だった。  その横には大きく。 『やーい!!』 『ひっかかった!!』  その下には小さく。 『ふひひ♪』 『うぷぷ♪』 『時間切れですぞ~♪』  さらに隅には申し訳程度の文字。 『※よくここまで調べました。合格ですぞ♪』 『スカウト科助教 シャーリー  学生補助員 ダキニラ』  …………。  誰一人、声を出さなかった。  一人は額を押さえ、  一人は探知具を静かに下ろし、  一人は膝をつき、  一人は力なくランタンを下げる。  迷宮には、重苦しい沈黙だけが流れていた。      ◇  訓練終了後。  出口で待っていたシャーリーは、いつものように「ふひひ♪」と笑っていた。 「皆さん、見事に引っかかりましたな。」 「うぷぷ♪ あんなに真面目に調べてくれるとは思わなかったよ~♪」  学生たちは、ぐうの音も出ない。  シャーリーは笑みを少しだけ収めると、教官らしい落ち着いた口調で続けた。 「慎重であることは大切ですぞ。」 「ですが、敵は罠だけではありませぬ。」 「時間も奪いに来ます。」 「だからこそ、『調べるべきもの』と『見切るべきもの』を見極めることが重要なのです。」  そして、少しだけ口元を緩める。 「……最初に申し上げたでしょう?」 「『怪しすぎるもの』もまた、疑うべきですぞ、と。」  学生たちは、その言葉を思い出す。  訓練開始前。  あの布の掛かった看板。  意味深な説明。  そして、迷宮で見つけた、あまりにも怪しすぎる看板。  ――全部、最初から伏線だった。  ようやく一本につながった学生たちの表情を見て、ダキニラが吹き出した。 「うぷぷ♪ でも、あの看板、助教が三日もかけて描いてたんだよね♪」  一瞬の静寂。  シャーリーはぴたりと動きを止めた。 「…………。」 「ダキニラさん?」 「ふ、ふひひ……その件は秘密ですぞ♪」  その日、スカウト科の演習棟には、悔しさと笑い声がいつまでも響いていた。

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さかいきしお
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コメント

投稿
えどちん

2026-08-01 12:36:33
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T.J.

2026-07-29 21:53:23
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さかいきしお

2026-07-29 22:01:05
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翡翠よろず

2026-07-29 08:47:11
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さかいきしお

2026-07-29 22:00:59
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tare_koala

2026-07-28 20:12:20
返信
さかいきしお

2026-07-29 22:00:56
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Ken@Novel_ai

2026-07-28 07:13:02
返信
さかいきしお

2026-07-29 22:00:52
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サントリナ

2026-07-28 00:00:14
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さかいきしお

2026-07-29 22:00:48
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早渚 凪

わずか3日でこの巨大な絵を描き上げたと申すので・・・!?

2026-07-27 23:38:05
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さかいきしお

ふひひひ、似顔絵かきはスカウトの必須スキルですぞ~

2026-07-29 22:00:43
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guest

2026-07-27 23:00:32
返信
さかいきしお

2026-07-29 22:00:18
返信
もぐっち

2026-07-27 21:32:55
返信
さかいきしお

2026-07-29 22:00:13
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ippei

2026-07-27 20:32:54
返信
さかいきしお

2026-07-29 22:00:10
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しるばん

2026-07-27 18:48:46
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さかいきしお

2026-07-29 22:00:05
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ucchie2772

看板1枚に気合い入れ過ぎニャw

2026-07-27 18:36:38
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さかいきしお

フヒヒ、役に立ちましたぞ~

2026-07-29 22:00:01
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gosakky

石橋を叩き過ぎてヒビ入れちゃった感じだけど…最後のデフォルメ絵が可愛いので許す(ォィ(笑)

2026-07-27 17:14:23
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さかいきしお

ふひひひ、効果はばつぐんですな~

2026-07-29 21:59:27
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みやび

探索に時間をかけすぎるのも問題じゃな~

2026-07-27 17:06:40
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さかいきしお

ふひひ、魔王さまのお城も万全にしておりますぞ~

2026-07-29 21:58:40
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kacky333

2026-07-27 15:08:04
返信
さかいきしお

2026-07-29 21:57:40
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Rin

2026-07-27 14:21:26
返信
さかいきしお

2026-07-29 21:57:35
返信
Anera

2026-07-27 14:16:45
返信
さかいきしお

2026-07-29 21:57:29
返信

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