三つの民、三つの王国 II ―それぞれの豊かさ―
2026-08-29 17:20:26
対象年齢:全年齢
深い森の奥。
光る胞子が雪のように舞うキノコの王国では、
妖精たちが今日も歌い、踊り、空を飛ぶ。
大気に満ちる力だけで生きられる彼らには、
畑を耕す必要も、獲物を追う必要もない。
だから今日も遊ぶ。
明日もきっと遊ぶ。
それが妖精たちの暮らしなのだから。
そこから遠く離れた不毛の大地。
粗末な畑を耕し、獣の革をなめし、
男たちは獲物を求めて荒野へ向かう。
木の棒を振り回して遊ぶ子供たちも、
いつの日かこの厳しい土地を生きる戦士になる。
何もない土地だからこそ、
オークたちは自分たちの手で今日を作る。
そして豊かな森と花畑の向こう。
静かな湖に浮かぶ白亜の魔法王国。
虹の橋が城門へ伸び、
空には大鷲とペガサス、箒に乗った魔法使いたちが舞う。
最高塔に浮かぶ小さな星は、
彼らが追い続ける「世界の理」の象徴。
妖精は世界から恵みを受け、
オークは世界と戦い、
魔法使いは世界を知ろうとする。
同じ空の下にありながら、
同じ生き方をする者は誰もいない。
どれが豊かで、どれが貧しいのか。
それを決めるのは、
きっと私たちではない。
――これは勇者が旅立つ前から存在していた、
名もなき人々の「世界」の物語。
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