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美食神官の宿題

2026-08-30 04:41:05

NovelAI

2026-08-30 04:41:05

NovelAI

41

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 42 位

参加お題:宿題
「チェルキー。あなたに宿題があります」 神殿で祈りを捧げていたチェルキーは、顔を上げた。 「宿題、ですか?」 デリシア神の神託。 チェルキーは少し緊張しながら、その言葉を待った。 「あなたは、料理を作ることが好きですね」 「はい! 食べてもらって、美味しいって言ってもらえるのが一番嬉しいです」 「それは、とても良いことです」 神は優しく答えた。 「大勢の人に食事を与えることも、食べる力を失った人に食べられる料理を作ることも、飢えた人を救うことも、美食神官の大切な務めです」 「はい」 「でも――」 そこで、神の声が少しだけ静かになった。 「人間の幸福には、それだけではないものがあります」 「……?」 「あなたの料理を、誰が食べても美味しいでしょう」 「もちろんです!」 チェルキーは即答した。 「では、考えてみなさい」 「何をでしょう?」 「**一人のために料理を作ることを**」 「一人……」 「その人が何を好むのか。何を食べれば喜ぶのか。疲れているときには何を作ってあげたいのか」 チェルキーは黙って聞いていた。 「そして――」 「……はい」 「あなたの料理を食べて『美味しい』と言ってくれたとき、その言葉を**誰から言われたら、自分が一番嬉しいのか**」 「…………」 「考えてみなさい」 「答えを出す必要は?」 「ありません」 「その人を見つける必要も?」 「ありません」 「では……?」 「気づきなさい」 神託は、それだけだった。 チェルキーは神殿を出たあとも、しばらく首を傾げていた。 「一人のために料理……」 大勢のために作る料理なら分かる。 皆が美味しく食べられるようにする。 栄養を考える。 体調に合わせる。 それは神官としても料理人としても、よく分かっている。 けれど―― 「誰に食べてもらうのが一番嬉しいか、か……」 それは考えたことがなかった。 数日後。 藍引島、自衛陸軍キャンプ。 昼食の時間が近づき、チェルキーは簡易厨房で一人、弁当を作っていた。 「一人のために……」 誰に作ろう。 しばらく考えて、頭に浮かんだのはブロント少尉だった。 よく食べる。 好き嫌いも少ない。 料理を出せば、素直に美味しいと言ってくれる。 「……うん。まずは少尉にしてみよう」 卵焼き。 唐揚げ。 焼き魚。 野菜の煮物。 おにぎり。 果物。 可愛らしい弁当箱に、丁寧に詰めていく。 ――ただし、量だけは全く可愛らしくなかった。 ところが、完成した弁当を持って少尉のところへ向かうと、 「チェルキーさん、少尉なら今日は病欠ですよ」 「……え?」 思わず弁当箱を見る。 せっかく作ったのに。 捨てるわけにもいかない。 「どうしましょう……」 すると、近くにいた福井候補生が弁当箱を見ていた。 「あの……それ、余ってるんですか?」 「ええ。少尉に食べてもらおうと思って作ったものなんですが」 「もしよかったら……」 チェルキーは少し考えた。 「福井候補生、食べてみます?」 「いいんですか!?」 「少尉用なので、量はかなりありますけど」 「大丈夫でぷ!」 福井候補生は嬉しそうに弁当箱を受け取った。 そして、一口。 「…………!」 「どうです?」 「うまっ!」 チェルキーが目を瞬く。 「おいしいでぷ!!」 それからは早かった。 卵焼き。 唐揚げ。 焼き魚。 煮物。 おにぎり。 果物。 福井候補生は夢中になって食べていく。 「ごちそうさまでした!」 弁当箱は、見事に空になった。 「いやあ……こんなお弁当、毎日食べられたら最高ですね!」 「そうですか?」 「はい!」 福井候補生は満面の笑みで言った。 「もう一生こんなお弁当食べたいぐらいです!!」 「…………」 チェルキーは、その言葉を聞いて黙り込んだ。 一生。 その言葉だけが、妙に耳に残った。 その日の夕方。 チェルキーは一人、キャンプの部屋で料理ノートを開いていた。 ページの端に、今日のことを書き留める。 ――福井候補生。 「美味しい」と言ってくれた。 「一生食べたい」とまで言ってくれた。 そして翌日。 病欠から戻ったブロント少尉にも、改めて弁当を作った。 「少尉、これ……」 「私にですか?」 「はい」 「わあ、可愛い!」 少尉は嬉しそうに弁当箱を開けた。 「いただきます!」 ぱくっ。 「……おいしいです!」 チェルキーは、その顔を見ていた。 「本当に美味しいです。ありがとうございます!」 「はい」 「明日も食べたいですね!」 チェルキーは、少しだけ笑った。 少尉も喜んでくれる。 福井候補生も喜んでくれた。 どちらも嬉しい。 けれど―― **同じ「美味しい」でも、自分の中に生まれる感情は、同じではない。** チェルキーは、その日の夜。 料理ノートを閉じながら、ようやくデリシア神の言葉を理解し始めていた。 料理は、誰にでも美味しく作れる。 誰にでも喜んでもらえる。 それは素晴らしいことだ。 けれど。 誰か一人のために、 「今日はこれを作ってあげよう」 と思うこと。 その人が美味しいと言ってくれることを、心から楽しみにすること。 そして―― **「この人に美味しいと言ってもらえたら、一番嬉しい」** と思えること。 それは、大勢の人に食事を与えることとは、別の幸福なのだ。 「…………」 チェルキーは、少しだけ頬を緩めた。 「そういうことだったんですね、デリシア様」 まだ、答えはない。 誰がその一人なのかも分からない。 いつか恋人ができるのか。 家族を持つのか。 それとも、別の形の人生を選ぶのか。 それもまだ分からない。 けれど―― **「誰か一人を特別に想う」という選択肢が、人間にはある。** そのことを知ることができた。 それなら。 「宿題、合格……なのかな?」 チェルキーは料理ノートを閉じた。 翌朝。 厨房では、また一つ。 可愛らしい弁当箱に、明らかに一人分とは思えない量の料理が詰められていた。 「さて、今日も美味しく作れたね」 チェルキーは笑う。 そしてまだ知らない。 この弁当を作る日々の中で、自分自身の「特別」がいつか見えてくることを。

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さかいきしお
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コメント

投稿
Ken@Novel_ai

2026-08-31 07:09:40
返信
guest

2026-08-30 23:18:01
返信
白雀(White sparrow)

(チェルキーちゃんにも,いずれそういう相手ができるのか…その時はルーファと一緒に祝福せねば)

2026-08-30 20:55:13
返信
さかいきしお

ふひひひ、お祝いしましょうぞ うぷぷぷ、縁を祝うのは幸運神官の役目だしね~

2026-09-04 18:01:51
返信
Rin

2026-08-30 19:58:15
返信
ippei

2026-08-30 18:25:04
返信
tare_koala

2026-08-30 16:39:18
返信
クマ×娘 D.W

2026-08-30 15:33:40
返信
翡翠よろず

2026-08-30 08:55:34
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悪堕ち最高でR

2026-08-30 08:36:53
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えどちん

2026-08-30 07:27:05
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