一人旅、出発前に終了
2026-10-21 10:37:29
対象年齢:全年齢
参加お題:旅
至高神ファリアに仕える若き神官、アセリア。
今回、教会の務めで向かうのは、王都から馬車で片道五時間ほどの小さな村。家族も従者も同行しない、初めての本格的な一人旅である。
少し不安はある。けれど、神官としての務めを果たすため、いつまでも誰かに頼ってはいられない。
「よし……!」
旅荷物を手に、アセリアは馬車の前で胸を張った。
「アセリアは今、一人で旅立ちます!!」
決意も新たに、馬車の扉を開ける。
「ふひひひ」
「来たか、ガキ巫女」
「おやつ持ったー?」
「…………えっ?」
黒髪のシャーリー。銀髪のリリス。緑髪のチェルキー。
見慣れた三人が、当然のように座席を占領していた。
「な、なぜ皆さんがここにいるのですかーっ!?」
「ふひひ、奇遇ですな~」
「ふん、、幸運とやらがよいな」
リリスが冷ややかに突っ込む。
「それよりアセリアちゃん、おやつは?」
チェルキーは満面の笑みである。
「おやつの問題ではありません!! 私は一人で旅立つつもりだったのです!」
「へえ。で、乗らねえのか?」
「うっ……!」
リリスに促され、アセリアは開いた扉の前で固まった。
乗らなければ、村へ行くことすらできない。
「……乗ります!」
「はい、どうぞー!」
チェルキーが隣の席をぽんぽんと叩く。
「ふひひひ」
「……何がそんなにおかしいのですか、シャーリーさん!」
こうして、アセリアの初めての一人旅は、出発前にして早くも予定が狂った。
――五時間後。
馬車は、畑に囲まれた小さな村へと到着した。
王都とは違う景色。王都とは違う暮らし。
アセリアは窓の外を見つめ、神官としての務めに思いを新たにする。
「さあ、皆さん。参りましょう!」
「その前に、おやつの残りを確認しましょう!」
「……あんた、まだ言ってるの?」
「ふひひ、旅はこれからですぞ~」
「ですから、緊張感を持ってください!!」
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