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おにぎり ~藍引島への漂着~

2026-06-18 12:30:00

Gemini

NovelAI

2026-06-18 12:30:00

Gemini

NovelAI

49

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 56 位

ウィークリー入賞: 44 位

参加お題:おにぎり
「わしが若い頃の話じゃ」 老人はそう言って、おにぎりを一つ手に取った。 藍引島の米で作られた塩むすびだった。 夕暮れの縁側。 黄金色の田んぼから吹く風が涼しい。 三人の子供たちが老人を囲んで座っていた。 「また戦争の話?」 「今日は怖い話じゃ」 老人は笑った。 「もっとも、本当に怖かったのは最初だけじゃがの」 昭和十九年。 南方戦線。 老人はその頃、まだ見習い士官だった。 部隊は壊滅した。 生き残ったのは五人だけ。 ジャングルを彷徨い続けていた。 その森は妙だった。 暑いはずの南方なのに寒い。 霧が漂い、 水辺ばかりが続く。 鳥も鳴かない。 虫もいない。 ただ湿った風だけが吹いていた。 「分隊長……」 部下が声を掛けた。 「もう食料がありません」 返事ができなかった。 もう三日。 何も食べていない。 「ここは……どこなんでしょうな」 誰も答えられない。 地図にもない。 見覚えもない。 「畜生……」 「どうせなら故郷の祭りの夢でも見たかったな」 「お前、まだ食い物のこと考えてるのか」 「当たり前だろ」 「三日も食ってねえんだ」 皆が力なく笑った。 その時だった。 霧の向こうに人影が見えた。 長い緑色の髪。 風に揺れる外套。 小柄な少女。 兵士たちは立ち止まった。 「あ……」 誰かが呟いた。 「森の神様か……」 妖精などという言葉は知らない。 そんな存在も知らない。 だからそう呼ぶしかなかった。 少女はこちらを見ていた。 だが目が合わない。 何かを地面に置いた。 竹皮だった。 五つ。 綺麗に包まれたおにぎり。 少女は少し首を傾げた。 遠くて声は聞こえない。 だが口元の動きだけは見えた。 「……食べられるかな」 「……道しるべになるかな」 そんな風に見えた。 少女は胸元の印を握った。 麦と食器を模した不思議な印だった。 そして森を再び歩き始めた。 光の差す方へ。 次の瞬間。 五人は飛びついていた。 おにぎりへ。 泣きながら。 夢中で。 食べた。 ただの塩むすびだった。 だが人生で一番美味かった。 食べ終わると慌てて少女を追った。 今まで何日探しても見つからなかった出口。 それはほんの少し先にあった。 森が途切れる。 霧が消える。 暖かな日差し。 青空。 人の声。 炊事の匂い。 そこには村があった。 日本に似ている。 だが日本ではない。 見たこともない人々。 見たこともない文化。 見たこともない種族。 それでも確かに人が暮らしていた。 振り返った時。 緑髪の少女はどこにもいなかった。 「それからどうなったの?」 子供の一人が聞いた。 老人はおにぎりを一口かじった。 「助かったよ」 「戦争も終わった」 「ちゃんと日本へ帰った」 夕陽が田んぼを照らしていた。 「でものう」 老人は笑った。 「本土じゃうまくいかなんだ」 「結局またここへ戻ってきた」 「藍引島にな」 子供たちは笑った。 「じいちゃんらしい!」 「そうかもしれんな」 老人も笑った。 その時だった。 田んぼ道を一人の女性が歩いていく。 長い緑色のポニーテール。 緑と金の縁取りのマント。 収穫した籠を抱えている。 小柄だが元気そうな若い女性だった。 腰には大きな牛刀。 荷車の横には長柄武器。 畑仕事の帰りらしい。 「あ、チェルキー先生だ」 子供が手を振った。 「やあ。おにぎり美味しいよね」 チェルキーも笑顔で手を振り返す。 そのまま何事もなく通り過ぎていく。 老人は話を続けた。 「今でも思うんじゃ」 「わしらを助けたのは神様だったのか」 「それとも森の精だったのか」 少し考えて。 首を振った。 「まあ、どっちでもええ」 「腹を空かせた兵隊に飯を食わせてくれた」 「それだけで十分じゃ」 夕暮れの風が吹いた。 遠くでは収穫祭の準備が始まっている。 田んぼ道を歩くチェルキーは、そんな話など知らない。 今日の夕飯と、祭りの炊き出しのことを考えていた。 そして村には、炊きたての米の匂いが漂っていた。

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さかいきしお
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コメント

投稿
えどちん

2026-06-21 19:08:35
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ガボドゲ

2026-06-21 13:11:22
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クマ×娘 D.W

2026-06-20 20:20:21
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Rin

2026-06-19 22:49:28
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ippei

2026-06-19 19:29:33
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よ~みん

2026-06-19 01:03:57
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たぬ仮面

2026-06-19 00:11:39
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がったん

凄い!? 5年前に夢に見たのと同じ構図!? 金髪天使で、普通の海苔巻きおにぎりで… アメリカ兵と思って銃剣で突撃して、悲しい顔をしつつ消えていく金髪の天使… おにぎり食べながら…泣きながら後悔する日本兵… という夢をみたことあります 落とし込んでくれて嬉しかったです♪ …伝えてないのになんで知ってるん?とは思ったけど🤣

2026-06-18 23:30:52
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さかいきしお

ありがとうございまする。 ふむ。危機に面した人が同じように何らかの助けを受けて生還する話は世界中にありますな。 大丈夫。その天使様は少しビックリしてしまっただけですぞ。 いまも、いろんな所で人々を救われているでしょうな

2026-06-19 02:43:02
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がったん

泥水をすすり、米粒1つで味方と殺し合う… そんな極限状態やったと学んだからこそ…やったのかもです こういう画風とかを生成したこと無いので、再現度が高くて嬉しかったです♪ 作ってくれてありがとうございます💞

2026-06-19 03:43:39
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さかいきしお

こちらこそありがとうございます

2026-06-19 23:57:05
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guest

2026-06-18 23:11:13
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アーマーブレイクりょな伯爵

「今でも思うんじゃ」 「わしらを助けたのは神様だったのか」 「それとも森の精だったのか」

2026-06-18 23:04:58
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さかいきしお

チェルキー殿は神の使徒で、ドワーフ(妖精)だから半分は当たってるかもですな~

2026-06-19 23:58:14
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アーマーブレイクりょな伯爵

2026-06-20 01:14:17
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tare_koala

2026-06-18 22:35:17
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もぐっち

2026-06-18 22:18:27
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翡翠よろず

2026-06-18 20:18:11
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うろんうろん -uron uron-

2026-06-18 19:40:13
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しるばん

2026-06-18 19:18:33
返信
サントリナ

2026-06-18 17:58:57
返信
Anera

2026-06-18 15:29:40
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ai大好き1192

2026-06-18 13:30:15
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kacky333

2026-06-18 13:23:13
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みやび

2026-06-18 13:19:52
返信

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