バス停の常識
2026-06-27 02:59:59
対象年齢:全年齢
参加お題:バス停
午後から降り出した雨は、いつしか土砂降りになっていた。
「はぁっ……はぁっ……!」
女子高生は傘も持たず、小さな木造のバス停へ駆け込む。
「間に合っ──」
そこで固まった。
「……え?」
中には一人の外国人士官。
金髪のポニーテール。
壁には、びしょ濡れの黒い軍服をハンガーに掛けようとしているところだった。
そして本人は、白地に青い縁取りの昔ながらの体操着と、昭和を思わせる紺色のブルマ姿。
「おっ?」
少尉は振り返る。
「どうしました! 豪雨です! こちらへ!」
まるで何事もない笑顔。
女子高生は反射的に会釈する。
「し、失礼します……。」
(えっと……。)
(なんで軍人さんが体操着なんだろう……?)
少尉は胸を張って答えた。
「ご安心ください! 軍服は乾燥中であります!」
(そこじゃない……。)
雨はますます強くなる。
二人は木のベンチに並んで座った。
壁では軍服がぽたぽたと雨粒を落としている。
少尉はのんびり外を眺めながら、
「もうすぐ若菜少尉が迎えに来るかな~♪」
と、鼻歌まじり。
女子高生は横目で何度も少尉を見てしまう。
(軍服……。)
(体操着……。)
(外国人さん……。)
(全部気になる……。)
しかし当の本人は至って自然体。
雨音だけが静かな時間を刻んでいた。
(……なんなんだ、この人。)
そう思った瞬間だった。
遠くから、小気味よいエンジン音が聞こえてきた。
「あっ!」
少尉が立ち上がる。
「若菜少尉です!」
バス停の前へ軽快に滑り込んできたのは、一台のオープンジープ。
しかも。
車体いっぱいに描かれているのは――
ブロント少尉本人。
前も横も後ろも、全部本人。
雨は土砂降り。
幌は付いていない。
運転席では雨合羽姿の若菜少尉が満面の笑みで手を振る。
「あっ、少尉! 迎えに来ましたよ♪ 私もマニュアル免許取ったから、ジープ運転できますよ♪」
「ありがとうございます!」
少尉は迷わず軍服を抱え、体操着のまま乗り込んだ。
若菜少尉は女子高生にもにこっと笑って軽く敬礼する。
「それでは失礼しまーす♪」
豪雨の中、オープンの痛ジープは元気よく走り去っていく。
女子高生はその姿を見送りながら、小さくつぶやいた。
「……ブルマのことなんて、もうどうでもいいや。」
雨音だけが、静かにバス停へ戻ってきた。
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