ロック鳥騒動――水難解決、学院に新たな災難
2026-10-24 03:13:40
対象年齢:全年齢
参加お題:文鳥
「た、大変です! 町の噴水が暴走しています!」
「噴水が暴走……。水の精霊でも怒らせたのか……」
冒険者ギルドからの依頼で広場にやってきたアーゼリンは、そこで足を止めた。
町の噴水を占領していたのは、家ほどもある巨大な鳥だった。
黒い頭に白い頬斑、灰色の翼、鮮やかな赤いくちばし。文鳥によく似ているが、何もかもが規格外である。
バシャァァァン!
巨大な鳥が翼をばたつかせるたび、噴水から大量の水が飛び散り、広場の露店も石畳も水浸しになっていく。
「ぴちゅっ!」
当の鳥は、実に楽しそうだった。
アーゼリンはしばらくその様子を眺めていた。
「……なるほど。水浴びがしたいのだな」
「そ、そんな悠長な! 町が水浸しですよ!?」
「うむ。困ったものだ」
本人も困っているらしい。表情からは、あまりそう見えないが。
アーゼリンは巨大な鳥に近づき、精霊使いとしての呼びかけでその気を静めていった。
「もう十分だろう。上がるのだ」
巨大文鳥は、もうひとしきり水を跳ね散らかしてから、ようやく噴水を出た。
「ぴちゅぅ……」
「よし」
アーゼリンは頷いた。
町の人々から歓声が上がる。
「さすがアーゼリン様!」
「町を救ってくださった!」
「いや。水を止めただけだ。後片付けは頼む」
そう言って、アーゼリンは広場を後にした。
――その日の夕方。賢者の学院、中庭。
「……なぜ、ついてきた」
アーゼリンの目の前には、芝生を占領して眠る巨大文鳥がいた。
どうやら、騒動を収めてくれた彼女をすっかり気に入ってしまったらしい。
鳥はお腹を地面につけ、足を体の下にしまい、翼を畳んで気持ちよさそうに眠っている。
「ぴぃ……」
巨体の下では、芝生が無残に押し潰されていた。
「アーゼリンさん! これはいったい何ですか!?」
学院の学生たちが、遠巻きに騒いでいる。
「ロック鳥の一種だろう。文鳥に似ている」
「そういうことを聞いているのではありません!」
アーゼリンは眠る鳥を見下ろした。
「……悪さをする気はなさそうだ」
そう言って、黒い頭を軽く撫でる。
巨大文鳥は気持ちよさそうに目を細め、再び眠りについた。
「ぴちゅぅ……」
「……さて。どうしたものかな」
高名な冒険者とはいえ、この学院では一介の学生。
「……芝生を戻すのは、私の勉強ではないと思うのだが」
アーゼリンは首を傾げた。
学院の学生たちは、誰ひとり反論できなかった。
こうして町の水難は解決した。
ただし、今度は賢者の学院の中庭が占拠されたのである。
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