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炎の魔女と黒衣の呪歌

2026-05-17 04:10:45

NovelAI

2026-05-17 04:10:45

NovelAI

48

対象年齢:全年齢

デイリー入賞: 9 位

参加お題:赤髪
王都において、魔法女学院と賢者の学院の交流会は、毎年恒例の催しであった。 もっとも。 “交流”などという穏当な言葉を、本気で信じている者は少ない。 片や、王侯貴族の令嬢たちが集う、伝統と格式の魔法女学院。 片や、身分・種族を問わず門戸を開き、魔術のみならず戦技、工学、呪術、吟遊術、果ては盗賊技能まで研究対象とする異端の学府、賢者の学院。 名目上こそ、賢者の学院が上位教育機関とされている。 だが、魔法女学院側からすれば。 成り上がりの雑多な学院。 しかも最近では。 「半妖のバード」 「暗黒神の神官」 「下町のライブハウスで危険思想を歌う助教」 などという、実に怪しげな人物が在籍しているらしい。 それが面白くない者は多かった。 そして。 それを面白がる者も。 交流会初日。 模擬戦闘演習場には、両学院の学生たちが集まっていた。 「ふぅん……」 魔法女学院側の列から、一人の少女が歩み出る。 波打つ真紅の長髪。 豪奢な制服。 そして、人を値踏みするような瞳。 カミラ。 炎系統魔術の天才。 貴族派閥でも将来を嘱望される魔女見習いである。 「あなたが、例の助教?」 彼女の視線の先。 賢者の学院側の端で、面倒臭そうに壁へ寄りかかっていた女が、ゆっくり顔を上げた。 銀髪。 少し尖った耳。 黒衣。 そして、どこか皮肉げな、美しい顔。 リリス。 呪歌学科助教。 「……そうだけど」 気だるげな返答。 カミラは、くすりと笑う。 「あら」 「賢者の学院は、ずいぶん門戸が広いのですね」 周囲がざわめいた。 カミラは続ける。 “わざと聞こえるように”。 「民衆に人気の、“半妖”の自由な吟遊詩人でも、助教になれるなんて」 一部の女学院生が笑う。 賢者の学院側も、空気が険悪になる。 だが。 リリスは。 「……別に、試験受けて通っただけだよ」 としか返さなかった。 その態度が、余計にカミラを苛立たせる。 「なら」 カミラは杖を掲げる。 「実力も本物なのか、見せていただけますわよね?」 観客席が沸いた。 教官たちは顔をしかめる。 だが。 交流戦の名目なら止めづらい。 「……めんどくせぇ」 リリスはため息をつき。 それでも前へ出た。 黒い修道服の裾が揺れる。 その胸元で。 五芒星に重なった銀十字が、微かに光った。 試合開始。 その瞬間。 轟音と共に炎が炸裂した。 「はっ!!」 カミラの火炎魔法は、学生の域を超えていた。 火球。 爆炎。 熱波。 連鎖誘爆。 まるで炎の嵐。 観客席から悲鳴が上がる。 「おい……」 「本気じゃねぇか」 賢者の学院の学生たちも顔色を変える。 だが。 炎の中。 銀色の光が、静かに揺れていた。 フルートの音。 リリスは。 避けない。 黒衣を焼かれ。 頬を裂かれ。 袖を焦がし。 熱風に銀髪を暴れさせながら。 それでも。 演奏を止めない。 「なっ……」 カミラの表情が変わった。 普通の魔術師なら。 四度は倒せる。 呪歌は発動まで時間がかかる。 それは常識だった。 ならば。 完成前に叩き潰せばいい。 それだけの話だった。 なのに。 目の前の女は。 真正面から魔法を受けながら、なお吹き続けている。 静かな目で。 まるで。 最初から、自分が傷つくことなど織り込み済みであるかのように。 「なんで……」 再び火炎を放つ。 だが。 僅かに。 魔力が乱れた。 音が。 耳に残る。 不快ではない。 むしろ。 暖かい。 懐かしいような。 心の奥へ入り込んでくる旋律。 ピース。 敵意を鎮める呪歌。 「っ……!」 カミラは歯を食いしばる。 攻撃しろ。 叩き潰せ。 そう思うのに。 炎が鈍る。 怒りが薄れていく。 代わりに。 別の感情が入り込んでくる。 理解不能な感情。 「どうして……」 観客席が静まり返っていた。 誰も喋らない。 ただ。 銀髪の半妖が。 炎の中で演奏を続けている。 その光景を見ていた。 やがて。 カミラの杖から、炎が消えた。 荒い息。 震える指。 汗に濡れた赤髪。 対するリリスも無傷ではない。 黒衣は焼け。 青金の助教マントは破れ。 口元には血が滲んでいた。 それでも。 最後の旋律を吹き終える。 静寂。 完全な静寂。 「…………」 カミラは、ただリリスを見上げていた。 理解できなかった。 なぜ。 ここまでして歌うのか。 なぜ。 倒れないのか。 なぜ。 この女は。 こんな目をしているのか。 そこには勝者の傲慢も。 敗者への侮蔑もなかった。 ただ。 静かな覚悟だけがあった。 「……あなた」 カミラは、震える声で呟く。 「本当に……」 その続きを。 彼女は言えなかった。 周囲から見れば。 それは、魔法女学院の才媛が、賢者の学院の異端助教に敗北した瞬間だった。 だが。 カミラ自身は違った。 あの瞬間。 彼女は初めて。 “力”ではなく。 “意志”に敗北したのだと理解していた。 そして。 理解してしまった以上。 もう、目を逸らせなかった。 炎の魔女は。 黒衣の呪歌神官に。 憧れてしまったのである。

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さかいきしお
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コメント

投稿
999fun

2026-05-20 23:54:03
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thi

2026-05-18 21:49:33
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さかいきしお

2026-05-18 23:30:28
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早渚 凪

2026-05-17 23:56:17
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さかいきしお

2026-05-18 23:30:07
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サントリナ

2026-05-17 23:52:30
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さかいきしお

2026-05-18 23:29:37
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guest

2026-05-17 23:41:28
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さかいきしお

2026-05-18 23:29:18
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Ken@Novel_ai

2026-05-17 20:52:53
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さかいきしお

2026-05-18 23:28:51
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kacky333

2026-05-17 18:24:41
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さかいきしお

2026-05-18 23:28:30
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もぐっち

2026-05-17 09:25:34
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さかいきしお

2026-05-18 23:28:10
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ガボドゲ

2026-05-17 08:52:26
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さかいきしお

2026-05-18 23:27:44
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Rin

2026-05-17 08:44:45
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さかいきしお

2026-05-18 23:27:28
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翡翠よろず

2026-05-17 08:32:56
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さかいきしお

2026-05-18 23:26:54
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ai大好き1192

2026-05-17 07:44:45
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さかいきしお

2026-05-18 23:26:36
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えどちん

2026-05-17 07:11:46
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さかいきしお

2026-05-18 23:26:05
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tare_koala

2026-05-17 07:11:44
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さかいきしお

2026-05-18 23:25:32
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しるばん

2026-05-17 06:15:18
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さかいきしお

2026-05-18 23:24:20
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なおたそ

2026-05-17 05:51:45
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さかいきしお

2026-05-18 23:23:25
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Anera

2026-05-17 05:30:47
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さかいきしお

2026-05-18 23:22:49
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みやび

2026-05-17 04:48:29
返信
さかいきしお

2026-05-18 23:22:31
返信

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