五月雨を集めて早しモガミン川 ~レイ少佐拘束作戦~
2026-06-24 10:16:27
対象年齢:全年齢
参加お題:五月雨
藍引島出張所に極秘命令が届いたのは、梅雨入り前の蒸し暑い朝だった。
富士見軍曹は封印された封筒を開き、内容を確認した瞬間に嫌な予感を覚えた。
その予感は大抵当たる。
今回も例外ではなかった。
「極秘命令。モガミン川上流渓谷地帯において、正体不明の勢力による国家『X王国』の成立が確認された」
部屋が静まり返る。
軍曹は続きを読み上げた。
「王国の実態を調査し、その指導者とされる『レイ少佐』を拘束せよ」
沈黙。
数秒後。
ブロント少尉が勢いよく立ち上がった。
「王国だって!!」
軍曹は額を押さえた。
なぜそこなのか。
「秘境探検ですね♪」
若菜少尉も嬉しそうだった。
「お弁当何日分作ろうかな?」
チェルキーはすでに食料計画を立てている。
「冒険クマ!」
プーにゃんは両手を上げた。
シャーリーだけが妙に意味ありげな笑みを浮かべている。
そして偶然そこにいたレイちゃんが、お茶を飲みながら言った。
「面白そうですわ🤤」
誰も止めなかった。
今思えば止めるべきだったのかもしれない。
数日後。
遠征隊は哨戒艇《さみだれ》でモガミン川を遡上していた。
ジャングルの川。
濁った流れ。
朝霧。
頭上を覆う密林。
その光景はまるで昔の戦争映画のようだった。
船首ではブロント少尉が双眼鏡を覗いている。
軍服の上からベトナム戦争風の装具帯を装着し、ALICEパックを背負い、本人は完全にブラウンウォーターアーミー気分だった。
「怪しいね!!」
「ジャングルですからね」
富士見軍曹が即座に返す。
後方ではチェルキーが鍋を磨いている。
プーにゃんは干し肉を食べている。
若菜少尉は地図を逆さまに見ている。
レイちゃんはお茶を飲んでいる。
シャーリーは川を眺めていた。
その時だった。
「ふひひ」
珍しくシャーリーが口を開く。
「昔の詩人がですね」
「五月雨を集めて早し最上川」
少尉が振り向いた。
「おお!」
「知ってるよ!!」
全員が驚く。
「本当ですか?」
若菜少尉が目を丸くした。
少尉は自信満々だった。
「五月雨をいっぱい集めると川が速くなるんだよね!!」
沈黙。
富士見軍曹は空を見た。
シャーリーは肩を震わせている。
「まあ、大体そんな感じですねぇ」
「違います」
軍曹が即答した。
「違うんですか?」
「違います」
少尉は少し不満そうだった。
三日後。
渓谷地帯へ到達した。
断崖絶壁。
巨大な滝。
霧。
そして。
突然視界が開けた。
そこには巨大な石造都市が存在していた。
ジャングルに埋もれた失われた王国。
巨大な城壁。
神殿。
宮殿。
広場。
門には金文字。
KINGDOM OF X
「発見!!」
少尉が歓声を上げた。
若菜少尉も拍手する。
富士見軍曹でさえ驚きを隠せない。
本当にあったのだ。
その時。
隣にいたレイちゃんが小さく声を漏らした。
「あ」
「どうしたの?」
少尉が尋ねる。
「ちょっと行ってきますわ🤤」
そう言って船を降りた。
誰も止めなかった。
なぜ止めなかったのか。
後になってもよく分からない。
巨大な門が開く。
ラッパが鳴る。
衛兵が整列する。
レイちゃんは中央を堂々と歩いていく。
まるで帰宅したかのようだった。
大階段。
王座。
王冠。
マント。
そして。
レイちゃんが玉座に座った。
ただし下はいつものジャージだった。
「女王陛下万歳!!」
「レイ王国万歳!!」
「フォロワー四千人突破!!」
紙吹雪が舞う。
広場は歓声に包まれた。
少尉は固まった。
若菜少尉も固まった。
プーにゃんも固まった。
チェルキーだけは屋台を見つけていた。
富士見軍曹が静かに言う。
「レイ少佐でしたね」
その一言で少尉は我に返った。
そうだった。
今日は遠足ではない。
任務だった。
少尉は命令書を取り出した。
「レイ少佐!!」
レイちゃんが首を傾げる。
「はい?」
「拘束します!!」
広場が静まり返った。
レイちゃんも固まった。
「えっ」
少尉は王座へ駆け上がる。
「確保!!」
レイちゃんの腕を掴んだ。
「ちょっと待ちなさいな🤤」
「任務だからね!!」
「理不尽ですわ🤤」
「拘束です!!」
その瞬間。
ぽつ。
雨粒が落ちた。
シャーリーだけが空を見上げている。
「来ましたねぇ」
次の瞬間。
豪雨。
五月雨。
空が崩れ落ちたかのような雨だった。
モガミン川が暴れ出す。
濁流。
鉄砲水。
冠水。
王国は大混乱に陥った。
衛兵も住民も避難を始める。
少尉はレイちゃんの腕を離さなかった。
「撤収!!」
「離しなさいな🤤」
「だめ!!」
「誘拐ですわ🤤」
「拘束です!!」
全員が《さみだれ》へ飛び乗る。
直後。
濁流が船をさらった。
激流。
岩礁。
滝。
急流。
《さみだれ》は木の葉のように翻弄される。
若菜少尉は悲鳴を上げる。
チェルキーは鍋を抱える。
プーにゃんは手すりにしがみつく。
レイちゃんは少尉に掴まれたまま抗議している。
「だから帰ると言いましたのにーーー!!」
「離さないよ!!」
「離してくださいましーーー!!」
そして。
少尉だけが目を輝かせた。
「速いね!!」
富士見軍曹が叫ぶ。
「洪水です!!」
少尉は満面の笑みだった。
「本当に速くなった!!」
軍曹は思わず叫ぶ。
「だから違います!!」
シャーリーは腹を抱えて笑っていた。
やがて船は河口から海へ飛び出した。
全員ずぶ濡れだった。
だが少尉は満足そうだった。
レイ少佐拘束。
任務成功。
そう思った瞬間。
水平線に巨大な艦影が現れる。
空母X
レイちゃんが笑顔になった。
「あ」
「迎えですわ🤤」
救助ヘリが飛来する。
飛行甲板では無数の人影が手を振っていた。
『女王陛下ーーー!!』
巨大な横断幕。
4000 Followers Thank You!
「返さないよ!!」
少尉は叫ぶ。
「国際問題ですわ🤤」
「知らない!!」
しかし数分後。
レイちゃんは見事に奪還された。
夕暮れ。
強襲揚陸艇《五月雨1号》。
全員無事。
少尉はタオルで髪を拭きながら笑っていた。
「まあ、しょうがないよね!!」
富士見軍曹は作戦報告書を眺める。
レイ少佐拘束
⭕成功
レイ少佐護送
⭕成功
レイ少佐奪還阻止
❌失敗
X王国発見
⭕成功
フォロワー4181人
⭕繁栄中
報告書の余白を見て、軍曹は苦笑した。
そして小さく書き加える。
五月雨を集めて早しモガミン川
遠くの水平線。
空母Xの飛行甲板。
レイちゃんが小さく手を振っている。
「ごきげんよう🤤」
少尉は双眼鏡を覗きながら笑った。
「また迎えに行こう!!」
富士見軍曹は即答した。
「やめてください」
夕焼けの海に、その声だけが静かに響いた。
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コメント
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いろんな小ネタてんこ盛りですねー
Xでも人気者みたいじゃな~
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ゆけ~ゆけ~川○浩~
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